伝統を生まれ変わらせる
伝統工芸を生まれ変わらせた例として、ほかにも姜文中のホコリ取り「旺仔鶏」がある。手手企業社を創立した姜文中は、昔ながらの羽毛ホコリ取りを短くし、パソコン・キーボードや置き物用のホコリ取りに改造した。フワフワとした感触で、オフィスの癒しグッズになっている。
何年か前に「あなたにとって最も美しい台湾:フォルモサ写真展」で一枚の写真を見て、はっとした。彰化埔塩郷で羽毛ホコリ取りを作る陳忠露の写真だった。今ではほとんど見かけなくなったが、子供の時はホコリ取りで祖母に叩かれたり、荷台に山ほどそれを載せて町を売り歩く自転車や、車のホコリを払うタクシーの運転手をよく見かけたものだ。そんな光景が次々と思い出されたのである。そういうわけで、後にクリエイティブ商品を構想する際に、羽毛ホコリ取りのことがさっと頭にひらめいたという。。
だが、羽毛ホコリ取りを作る工場も職人も、すでにわずかしか残っていなかった。
姜文中はまずデザインにこだわった。柄の部分には木目や質感の優れたブナやチークを選び、握った感触が良いようにデザインした。そしてメンドリのお腹の羽毛を用いて、サイズも小さくし、パソコンのモニターやキーボードのホコリを払えるようにした。とりわけ烏骨鶏の白い羽で作った真っ白なホコリ取りは、おしゃれなだけでなく、廟の儀式にも使われたりした。絵画や芸術品のホコリ取りには、大きいサイズの物よりこのミニサイズの方が使いやすいと言うヨーロッパからの客もいた。
立てて置きやすいよう、鶯歌の磁器で作ったスタンドも各種デザインした。そのうち「開運鶏」は、台湾デザイン界の最高栄誉である「金点設計奨(ゴールデンピン・デザインアワード)」を2018年に受賞した。
姜文中は自分のデザインしたホコリ取りを作ってほしいと、彰化在住の職人、陳忠露を説得した。そして台北の松山文創パークや神農市場で販売するようになり、陳忠露は1年余りで少なくとも4000本以上の注文を受けている。
デザインを通じて伝統工芸を日常生活によみがえらせた姜文中は、「もっと大きな夢があります。日本の無印良品のように、台湾の伝統産業や資源を結び付けて台湾オリジナルスタイルのブランドを作りたいのです」と言う。
彼の話はまるで、『周礼』「東官考工記」にある「知者物を創る。巧者これを述べこれを守り、世これを工と謂う」のようだ。ミニトランペットは産業の新たな方向性を奏で、「旺仔鶏」も伝統工芸を新たに輝かせたと言えよう。
キャロルブラス・ツーリズム・ファクトリーでは、実際に金管楽器を手に取って吹いてみることができる。
子供の唇は柔らかいため、簡単な練習を通して管楽器演奏を体験でき、達成感を味わうことができる。
アイディアをデザイン画に起こし、模型を製作して、美しく実用的な商品が生まれる。(Hands提供、姜文中撮影)
Handsは羽毛ホコリ取り作りの職人である陳忠露と手を組み、伝統の技術を守り続けている。(Hands提供、姜文中撮影)
DIYイベントを通して子供たちも羽毛ホコリ取り作りを体験し、伝統工芸に触れる。(姜文中撮影)