映像で語る物語
中正大学メディア学科の助理教授である蔡崇隆さんは、東南アジア出身者についてのドキュメンタリー映画の監督でもあり、作品には花嫁三部作と言われる『我的強娜威(僕のジョナウェイ)』『黒仔討老婆(黒仔の嫁取り)』『中国新娘在台湾(台湾における中国人花嫁)』などがある。キム・ホンさんを映画の道に導いたのは蔡さんだった。彼女は最初、友人など自分の生活周辺をもっぱら撮っていたという。なぜ『失婚記』を撮ることになったのかと問うと、初めから計画があったわけでなく、友人の中に離婚経験者が何人かいることにふと気づいたのがきっかけだったという。
『失婚記』に登場する女性はすべて結婚に挫折した経験を持つ。蔡さんは「キム・ホンは同じ女性で言葉も通じ、同じ経験をしていることから、女性たちも心を開きやすい。この作品の監督には私より適しています」と言う。自分自身の話も加え、カメラは4人の女性の間を移動し、彼女らのふれあいも捉える。そこで見せる素顔は、男性監督には捉えがたいものだ。東南アジア出身の女性との国際結婚が失敗すると、世間は女性側のせいにしがちだが、そんな偏見を打ち破りたい、とキム・ホンさんは考える。「お金のためでなく、幸せがほしいだけなのです」
現在、キム・ホンさんは蔡さんとともに『可愛陌生人(可愛いストレンジャー)』のポストプロダクションを進行中だ。外国人労働者の失踪を扱った作品で、ベトナムでは悪徳業者がいたり、仲介者に高額を払わなければならないので、失踪者にはベトナム人が最も多い。撮影期間中、ベトナム人労働者が送還されて、キム・ホンさんは多くの非難・中傷を浴びた。彼女は失望し、1年間撮影を中止したほどだった。だが再び奮起し、送還された労働者の近況を追うためにベトナムにも赴いた。労働者たちとの信頼関係を重んじて、この作品は一般公開しないことにした。映画祭や学校だけで上映する予定だ。
『失婚記』は第15回台北映画祭のドキュメンタリー部門で入賞し、グエンさん(右)は映画祭主席の張艾嘉から賞状を受け取った。