世界に名だたるビーガンの都――台湾 地球にやさしいライフスタイル

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2017 / 9月

文‧陳亮君 圖‧林格立


2017年4月、米国のCNNは再び世界の十大ビーガン都市の一つに台北を取り上げた。海外メディアが台湾のベジタリアンを取り上げたのはこれが初めてではなく、これまで海外に知られた野球、小籠包、夜市に加えて、ベジタリアンに対する台湾の影響力も見過ごせなくなった


ビーガン(Vegan)とは、動物由来の卵や乳製品、蜂蜜なども取らず、さらには環境や教育、生活などの各レベルに及ぶ生活態度を指す。動物由来の食品を摂らなければビーガンと言えるものではなく、環境、動物から全人類にやさしい生活方式が伴わなければならない。

 世界に発信する台湾のビーガン

2015年12月に気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)がパリで開催され、NGOパビリオンには13カ国からミートフリー・マンデー(月曜菜食日)関係の18団体が参加した。台湾ミートフリー・マンデーの提唱者・張祐銓は演壇に立ち、急速に拡大する肉食習慣が熱帯雨林、海洋と土壌に壊滅的な影響を与え、牧畜業で飼育される動物が世界の穀物の3分の1を食い尽くすと訴えた。さらに、台湾における最近10年のベジタリアン運動の成果として、2012年から全国の小中高校2328校において、延べ700万人が毎週1回の菜食日に参加と報告。学校だけでなく、中央と地方政府の多くも賛同している。「講演が終わると、スイスやノルウェーの関係者が台湾の実施方法を問い合せてきて、台湾でのベジタリアン運動推進を高く評価してくれました」と張祐銓は言う。

COP21の期間中、アーノルド・シュワルツェネッガーも関心を寄せ、ニューヨークのミートフリー・マンデーにおいて、肉食を減らすように訴えかけた。ニューヨークのミートフリー・マンデー団体は、ジョンズ・ホプキンズ大学と協力し、公衆衛生の立場から肉食の減少を推進する。イタリアとフランスでは、レストランのベジタリアン・メニュー普及を主とし、イギリスではポール・マッカートニーがミートフリー・マンデーの発起人となり、多くのファンの支持を集めた。

張祐銓によると、現在では40の国と地域において週一回菜食日が推進されているという。世界各地のベジタリアン運動は、各地のNGOがそれぞれ実施しているが、世界共通の環境問題への認識は一致している。台湾では各界の団体がミートフリー・マンデーを推進し、昔ながらの精進という宗教的要素もあり、健康、環境保護と動物愛護などの理由から運動に加わる人が増えてきている。

世界のベジタリアンが見た台湾

オーストラリアのアンドリュー・ニコルス、アメリカのエルバート・グー、南アフリカのミシェル・カゾンと、異なる国から来た三人が、同じビーガンの理念を通して台湾で巡り合った。

台湾に来て9年のアンドリューは、オーストラリアのスポーツ科学および教育の修士で、運動選手の調整とトレーニングが専門で、ピラティスの講師でもある。1988年に『エコロジカル・ダイエット(Diet for a New America)』を読み、家畜に対する不当な扱いや殺戮の描写が、幼い頃に見た家の農場での屠殺風景と同じだと思った。その後、シンガポールでヘルシーな生活の普及に努めながら、多くのケースを扱い、健康に対するビーガンの良好な影響を証明するに至った。ビーガンとして25年を過ごした彼は、この8年の台湾におけるベジタリアンの発展に感銘を受けた。当初、台湾では精進料理と言うだけで、栄養も味も重視されていなかったが、今では毎月のように新しいベジタリアンのレストランが開店し、彼にとって台湾は第二の故郷となった。

同じく台湾にベジタリアン・レストランを開きビーガン普及に努めるミシェルは、台湾人に啓発されてビーガンとなった。当初、台湾には観光で来ただけだったが、台湾で菜食が一般に普及し、ベジタリアンを尊重する態度を見て、他国では及びもつかないと感じた。そこにある健康重視と動物愛護の態度を理解し、ビーガンとなることを決意した。もともとシェフであった彼女は、台湾の野菜の種類が豊富なことに驚いており、「台湾の野菜は種類が多く芥藍(カイラン)、龍鬚菜、空心菜、山蘇(オオタニワタリ)など、南アフリカにはありません」と言う。台湾には四季を通じて野菜や果物の種類が多く、その豊かな環境での生活は、一種の幸福であるという。

「ベジタリアンとなったのは12年ほど前、娘が産まれようとしていて、殺伐としたこの世界にあって何とか殺生を少なくしたいと思い、食べ物でも動物を避けようと思いました」と、台湾に来て4年のエルバートは話す。中国南京芸術学院の客員教授の彼は、美術教育と展覧会で世界各地を回っていたが、どこでもベジタリアン・レストランを見つけるのは難しかった。それが台湾では、ちょっと歩けば見つかる。台湾は時代ごとに異なる文化の洗礼を受けてきたので、菜食においても多様な料理が食されてきたと言う。近年、彼はベジタリアンに関する芸術創作を試みている。乳製品や肉類のパッケージには楽しそうな動物の図柄が描かれるが、その背後には動物の墓場と悲しみが隠されていることを表現したいのである。

 世界の原野と緑の革命にリンク

「生態系にとっては、どの種も同じように重要です」と、数十年来にわたり原野保護に尽くしてきた荒野基金会の徐仁修董事長は、地球保護の観点から緑の革命を支援する。人間の貪欲は生存の必要性をはるかに超えていて、利益のために山林を乱伐し土木工事を展開する。一部の国では飼育コスト低減のために肉骨粉を牛の飼料に混ぜて、狂牛病発生を招いた。しかし、台湾の菜食主義の理念により、健康と環境保護の問題の多くが解決できる。徐仁修は荒野保護のボランティアが台東で行う自然農法を取り上げ、これにより食による環境への害を低減できると期待する。

「22年前に育成を開始した学生たちは、今では環境保護ボランティアとなり、NGOに参加し地球公民基金会の東部特派員として、この土地のために戦っています」と、徐仁修はかつての教え子を誇りに思う。それ以外の保護活動としては、新竹県香山蓮花池の食虫植物保存や、毎年10月に新竹県横山で行うタイワントビアオガエル産卵保護の活動が挙げられる。大自然は子供たちの想像力を育む最良の場で、大自然の生命を目にして、子供たちは自然の美の観察力を養える。

徐仁修はまた長年に渡り、荒野保護協会の手法を応用し、各地に華人の自然生態教育組織を設立してきた。その足跡はニカラグア、オーストラリア、マレーシア(サバ州を含む)、中央アメリカなどに及ぶ。「マレーシアのサラワクにおいて、アブラヤシ農園のために森林が大規模に伐採されていました。私たちの方法は地域に入り、集落の長と話し合いを進めることでした」。徐仁修などのボランティアが調整を進め、ついに森林の価値を理解してもらい、この貴重な自然資産を保護することができたという。

若い草の根運動

台湾では、若い世代が自身の力で、世界のビーガンに呼応して動き出した。ベジタリアンの宴席を用意するのはシェフ馮培格である。「大学時代に、お金をかけず簡単でヘルシーにと考えて三食作っていたのがビーガンに繋がりました」という彼は、国立屏東科技大学の食品科学修士課程を修了してから、精進料理レストランに就職した。大学で学んだ知識と概念に経験とさらなる知識を積み、実験と失敗を繰り返しながら、食材と知識を融合させていくことができた。

馮培格は菜食教育ワークショップで講師を務め、テレビの料理番組にも出演する。「外国人は料理に苦み、渋み、酸味などを活用します。味を研究してみると、こういった苦みや酸味は食物の味に深みを加えてくれます。渋みを使うことで、コクのある旨味に爽やかな奥行きを与えてくれるのです」と、馮培格は意気軒高に料理を語る。そこにあるのは、行動でビーガンとしての生活を表現する一種の方式なのである。

ほかにも多くの若者が、台湾各地の様々な場でベジタリアンと動物の権利の理念を提唱しようとしている。「純菜食30日」を提唱する呉智輝は仕事の合間に各地の仲間に呼びかけて、北から南まで街頭に立って菜食主義普及を呼びかけている。台湾大学動物権利クラブの張家珮顧問、師範大学を卒業したばかりの戴宇珮陞は、キャンパスでの講演、ベジタリアン料理のテイスティング・イベントなど、各種活動で、ビーガンのライフスタイル普及を図る。

これらの若者の無私の努力と理想追求の姿勢こそ、若い世代のエネルギーを体現している。世界各地でビーガンの流れが形成されつつあり、例えばドイツのベルリンではステーキ・ハウスでもベジタリアンのメニューが選択できるし、南アフリカではベジタリアン・レストランが急速に増加してきた。近隣の韓国では、完全なベジタリアンであるビーガン・レストランが増えていて、ソウルでは毎月ベジタリアンのグルメ・イベントが行われている。世界的にビーガンが隆盛しつつある流れの中で、台湾もその動きを主体的に取り入れ、アジアの緑の革命をリードできるものと期待されている。

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