保管と出庫の効率が向上
コロナ禍で、ネット通販がロジスティクスと倉庫業を活性化している。従来の倉庫作業は労働力と時間を要し、長時間にわたって大型の荷物を運搬することは、労働者の身体にも大きな負担となっていた。そこで、無人搬送車(Automated Guided Vehicle, AGV)技術が現れた。米国のEC最大手アマゾンでは、倉庫作業員は定点に立ち、AGVが別々に運んできた商品を、作業員が箱詰めして出荷する。
台湾でもAGV技術を導入する中小企業はかなりあり、無人搬送車を専門に製造するメーカーもある。工業技術研究院が新竹物流、漢錸科技(iAmech)と共同開発した「AI (人工知能)立体型スマート倉庫システム」は、技術を更に大きく前進させた。工業技術研究院サービスシステムテクノロジーセンター‧COOの陳慧娟によると、14層の高層ラックに対応し、シャトル式自動倉庫に組み込むことで、大幅に倉庫の保管効率が上がることがこのシステムの特長だという。更にAI技術を倉庫作業プロセスの各所に活かし、より繊細な応用ができる。
このAIが意思決定する物流センターでは、物品が入庫すると、システムが自動的に寸法を計測し、AIアルゴリズムとビッグデータ分析に基づいて、売れ筋商品とよくある同時購入品を近い位置に保管して、移動距離を短縮する。消費者が注文を確定すると、システムが購入商品のタイプと数量を分析し、最適なピッキングルートのプランを立て、1件の発注リストの商品を、ほぼ同時に出荷作業エリアに運ぶ。
陳慧娟によると、ストレージボックスがピッキング作業エリアから保管位置に戻る時も、システムが最適ルートを分析し、次の配送でも同様に効率よく動けるようにする。さらに、注文が入る前に過去のオーダーの記録に基づき、シーズンごとの人気商品を予測し、あらかじめ商品を適切な保管位置に配置する。これによって、ECサイトのキャンペーン時に起きていた倉庫の人手不足や、出荷の遅延トラブルが解消される。
このスマート倉庫システムの開発は、新竹物流が工業技術研究院に声をかけて始まった。事業者側が倉庫運営と管理を担当し、工業技術研究院がAI技術開発を担当し、さらに漢錸科技(iAmech)が自動化設備を構築した。新竹物流は国内のサードパーティ‧ロジスティクス最大手である。豊富な経験をもつが、開発した新技術で倉庫業の転換を図りたいと考えていた。漢錸科技は若い企業だが、大手コンビニチェーンやEC事業者と提携している。三者が1年かけて検討と実地調査を重ね、Yahoo!奇摩ショッピングモール用に建設したAI立体物流センターを、2019年に稼働開始した。最新技術を採用したYahoo!奇摩ショッピングモールは、効率が向上し、消費者が注文を確定してから商品のピッキングが完了するまでに10分間で済むようになり、労働力も30%節約することができたのである。
エジソン賞を受賞してからは、南アフリカ、米国、東南アジアに展開する台湾企業から問合せが来るようになった。遅れがちで間違いも起きる従来の無人搬送車を廃棄して、新技術を導入したいという企業もあれば、狭く人口密度が高い地域において、立体型スマート倉庫でスペースと人材の効率を最大化したいという企業もある。
陳慧娟は、スマート倉庫を今後、生鮮食品に応用すれば、作業員が低温の倉庫内にいる時間が短縮され、健康上の負担も軽減するという。この倉庫システムが、地域と人により優しく、便利な環境を作り出すことを期待している。
工業技術研究院では、まず特定の色の遺伝子群を大腸菌に導入する。その遺伝子群が機能を発揮した後、代謝を経て、さまざまな色の染料となる。(工業技術研究院)