保存ではなく、循環
陳正哲は私たちを建材銀行の倉庫に案内してくれた。「取り壊す家屋の建材すべてを回収できる場合、特に木材の循環性が最も良いのです」と言う。外に出ると、コウヨウザン、ヒノキ、リュウガンなどの古い木材があり、これらは梁や柱などの構造用の建材になる。コンテナの上には、台北菸廠から回収したアメリカ援助時代のアルミ合金棚があり、地面には鬼瓦が置かれている。さまざまな寸法やメーカーのものがあり、再利用前に選別される。
「こうして循環再利用することは、炭素固定にもつながります」と、陳正哲は、建材銀行と現在最もホットなテーマとを結びつける。木材はその体積から炭素固定量を算出でき、そこから建材銀行がどれだけの量の炭素を固定したかがわかるため、将来的にはこれをカーボン・ニュートラルの計算に入れることができる。
かつて、ここに保存のために中古の家具を持ってきた人がいたが、陳正哲はこの観念は正さなければならないと言う。「建材銀行の目的は保存ではなく、循環です。建材銀行に入れられるのは、分解して再利用できる材料だけです」と言う。文化遺産であれ、古い家屋であれ、地域の公共物、あるいは芸術創作であれ、いずれも古い建材の利用を無償で申請できる。そして建材銀行は回収したままの建材か、前段階の処理を施した材料を再利用に提供するのである。
「材料の回収はコスト削減のためではなく、循環させ、環境をよくするためです。古くて質の良い材料は建物の質を高めます」と陳正哲は言う。そこで彼らは、設計や建設、施工を行なう側とのコミュニケーションを欠かさない。建築家には設計に古い建材を組み込むよう説得し、建設会社には資源の再利用を説得する。一方の建材銀行側も、古い建材の釘を抜き、角度や面を修正するなどして職人が使いやすいようにする。
陳正哲は私たちを台南市の北区にある、旧日本軍歩兵第二連隊官舎群に案内してくれた。ここは修復中で、修復を行なうチームは建材銀行に木材や鬼瓦、ガラス、かすがいなどの提供を申請しており、これらは宿舎の雨戸や戸板、屋根、窓などに用いられる。建築チームの陳智賢によると、古い建材の再利用には知恵を絞らなければならず、工程も増える。「しかし、古い建材を再び建物に用いることには大きな意義と価値があり、私たちもやりがいを感じます」と言う。