ほとばしる生命
独立思考できる人間の育成が教育の本質だとするならば、惠文高校新聞部の指導教員‧蔡淇華は校内誌を通してそれを実践している。
2002年に創設された同校新聞部で、蔡淇華は生徒たちの成長を見守ってきた。同校の『惠声惠影』は、以前は学校史の記録を中心としていたが、ある年度の生徒が提案し、各学級に割り当てられたコラムを廃止して、部員が企画を立てられるようにした。当初は蔡淇華がテーマを与えていたが、後に生徒が決めるようになり、大気汚染を扱った「迷霧時代」や、香港の住居問題をテーマとした「十年鎏光」、方言の消失といった内容に取り組むようになった。160ページにわたる校内誌の内容は深く充実している。最新号の「分;号」では鬱をテーマとしている。董氏基金会が制作したアンケート調査を参考に、ネットや校内で中高生の鬱傾向を調査し、カウンセラーや、鬱病を克服したアーティストLu Luや癒し系作家の肆一にも取材した。レイアウトも黒から白へのグラデーションで谷底から望む黎明を象徴している。
年々調整を進めてきた『恵声恵影』は、今では表紙専門のチームもあり、写真を担当する生徒が企画を立て、校内でモデルを募集選考し、テーマに沿って制作する。例えば「迷霧時代」の表紙では二人の生徒が防毒マスクをして灰色にかすんだ町の中に立っている。著名人へのインタビューも多く、表紙に校内誌である旨が書いていなければ、商業誌と見間違えるほどの完成度だ。
多くの学校と同様、惠文高校新聞部でも先輩が後輩を指導し、実務の中で少しずつ編集の経験を積んでいく。多くの学校では校内誌は年に一回の発行だが、惠文高校では半年ごとに出している。これまでの『惠文惠影』をめくると、前学期のものは後学期のものより幼い感じがするが、蔡淇華はこれを練習本に喩え、「何事も初めての時は内在化した能力にはなりませんから」と生徒に自分たちに模索させている。蔡淇華によると、校内誌の制作を通して身につくのは文章力だけでなく、マーケティングや時間管理、コミュニケーションといった能力も高められる。
例えば、以前は口数も少なく落ち込みがちだった生徒が、2年にわたって校内誌を制作したことで、今では後輩の前で講義ができるようになり、自信に満ちた笑顔も見せるようになった。鬱病の生徒には、心の中の苦しみをインスピレーションにして文章を書くよう奨励している。そうした作品が校内誌で発表され、中台湾聯合文学賞でも評価されたことがあり、生徒たちが元気を取り戻す姿を見るのは蔡淇華にとって最大の喜びだという。教育関係の本を多数執筆している蔡淇華は、身近で生徒による校内誌編集を観察することで、彼らの考えに触れられ、時代の変化についていけると言う。「生徒たちは私のフィールドです」と言い、身体が動く限り、新聞部の指導を続けたいと考えている。
惠文高校新聞部は、報道や署名運動を通して若者の影響力を発揮し、惠来遺跡を開発から救った。