偶然のきっかけ
なぜトウガラシで起業しようと思ったのだろう。「本当に偶然のきっかけです」と彼女は言う。それまでは漬物を製造販売していた。漬物にラー油を使うのだが、市販されている安いラー油には添加物が含まれていて、質の良いものは高価なため、自分でラー油を作ることにした。「トウガラシはビタミンBやC、カロテン、カルシウム、鉄など豊富な栄養素を含んでいて、ラー油を作った後に、捨ててしまうのは惜しいと思い、その再利用を考えたのです」と言う。
そこで、ラー油を作った後のトウガラシを使ってスナック菓子を作り、漬物を買った人や友人に配ったところ、さまざまなアドバイスが得られた。油っこいという人がいたので、脱油機を購入して油を切り、味が単調だという人がいたので、味付けを工夫し、ゴマを加えてみた。
こうして改良を加えたスナックはおいしく、口コミで評判が広がって注文が入り始め、一年もしないうちに、副産物だったスナック菓子の売上が漬物のそれを超えるようになった。
資金も人脈もない李威辰を成功へと導いたのは、顧客に感動をもたらすマーケティングである。夜市や展示販売会などで、李威辰は誰にでも「お兄さん」「お姉さん」と声をかけて試食を勧め、真剣に感想を聞く。こうして口コミが少しずつ広がっていったのだ。
そして2010年にネット販売を開始したところ、大きな反響があった。だが、ヒットすれば真似する人が出てくるものだ。そこで本家本元の名を確立するため、2013年に台南市安平区にユニークな旗艦店をオープンする。
芥末脆椒(右)。(振禾食品提供) 今年ベルギーのiTQi(国際味覚審査機構)で星三つの優秀味覚賞を受賞した香酥甘梅脆椒(左)と星一つの評価を得た嗆辣辛末脆椒(右)。(振禾食品提供)