スキルと人脈
当時、医者をしている友人が癌になり、抗癌剤治療で苦しんでいた。その心身の痛みを癒してあげたいと考えた林怡君さんは、ネットで外国の天然ハーブに関する資料を探してみた。そして十数年来の人脈を活かし、アメリカのブランド、ジュース・ビューティーの銀杏茶やカモミールの入浴剤、ローズオイルのシャンプーなどを見つけた。
このメーカーとの一年余りにわたるコミュニケーションを通して、林さんは2年前に台湾における代理権を取得し、友人から20万元を借りて会社を興した。妹が責任者になり、彼女はマーケティングと教育訓練を担当している。現在の社員数は7人、商品は主にSPAや美容院に卸しており、月の売上は最初の30万元から1年後には100万元に成長した。現在この会社「純萃;有機生活館」の資本金は500万元だ。
かつて林怡君さんはノイローゼに苦しみ、暴飲暴食で体重は80キロに達していたというが、今の彼女からはそんな過去があったとは想像できない。33歳の彼女は、家族の支えがあったから会社を興せたと話す。当初は夫から「夜も寝ずに何をしているのか」と責められたこともあったが、代理権獲得までの厳しい交渉を経て、今は借金返済の目途も立ち、夫も林さんのことを、当時とはまるで別人のようだと言う。
しかし、この林さんのようにわずか2年で経営を軌道に乗せられるケースは多くない。
2年前にIT企業でのデザインの仕事をやめた張翠華さんは、長年コンピュータに向って根を詰める仕事をしてきたため、片腕を傷めてしまった。「横になって腕を圧迫すると、まるで200度のオーブンで焼かれているような激痛が走り、その痛みで目が覚めるほどなので、寝るのが恐くなり、リハビリの効果もあまり出ませんでした」と言う。友人に紹介されて気功を始めてから少しずつ回復してきたという。
腕の痛みに苦しんでできた彼女は、他人に幾度も修正されるデザインのような人生は送りたくないと考えて職場を後にし、大学の夜間部で経営学を学びながら、どんな店を経営しようか考えることにした。餃子の店、ジュースバー、複合型書店、スパゲッティ屋など、いろいろな店を考えたが、いずれも資金がかかり、リスクも高いし、自分には専門知識が欠けている。
そんな中で、韓国ドラマ「大長今」を見ている時に思いついた。キムチは台湾でも広く好まれており、健康志向にもマッチする。自分でも漬物が作る彼女は、キムチを作れる友達を探し、防腐剤や色素や甘味料などを加えない健康志向のキムチを作って販売することにした。
だが、難しいのはそれをどう売るかである。
大学夜間部の200名余りの同級生は彼女の良い顧客だが、1瓶150元するキムチは生活必需品ではないため売上は限られている。そこで、電話帳に広告を出している会社に一つ一つ電話をかけて試食品と注文書を送ってみたところ、半数の会社から注文が入ったこともある。
これほど積極的に営業しても、月の売上は5万元に過ぎず、原価や経費を差引くと利益は1万元余りに過ぎない。独身なので生活費はかからないが、プレッシャーは大きい。スーパーに置かないかというオファーもあるが、保証金や在庫や返品の管理なども必要で、資金のない彼女はまだ決心できずにいる。
「生活のための起業」から「知識型の起業」へ、女性の経営者と自営業者は増え続けている。朝食店や美容院、ブティックや花屋など、いたるところで女性経営者が活躍している。