幼い頃、私の家は市場の中にあり、一階では父がかき氷屋を営んでいた。毎日午前中に市場に買い出しに来る人は、喉が渇いたり、疲れたりしたら父の店に来て腰をかけ、ジュースを飲んでかき氷を食べていった。店が暇な時間になると、父は私を連れて市場を一回りしながら「今日は何が食べたいか」と聞いてくれたものだ。父と子の、この習慣は私が学校を出て働くようになってからも続いていて、実家に帰るたびに今も父と一緒に市場を見て回る。
子供の頃からの記憶があるせいか、私は伝統的な市場に思い入れがある。市場の中の人と人との関係は、単純な売買ではなく、思いやりや人情を感じさせるものだ。今は大型の商業施設が増え、車を止めるのが便利なこともあって、多くの消費者が大型店で生活に必要なものを一度に買い込むようになり、伝統的な市場を訪れる人は減ってしまった。
かつては繁盛してにぎやかだった新竹の東門市場。現在も午前中は従来の市場の機能を保っているが、買い物に訪れる人の大部分は店を経営している馴染み客で、若い人が訪れることはほとんどなくなっていた。そこでここ数年、新竹市は若い人が経営する店を市場に導入し始め、一部の店はインターネットでも注目されている。夕方になると昔ながらの市場は華麗に変身し、世界各地の料理が楽しめるレストラン街となり、若い世代が集まってくるようになった。
最近は、台湾各地で古い市場が次々と運営方針を転換して改装され、新しい世代の消費習慣に合わせるようになってきた。逆にデパートでは伝統的な市場を再現した売り場を作るなどして買い物をしやすい環境を作り、市場の人情味を取り入れている。今の世代は、それぞれの生活体験の中で、昔ながらの市場特有の温もりを感じられるようになってきたのだ。
新竹の東門市場では、今も午前中は従来通りの営業を行なっている。店主と顧客は商品の売り買いをするだけでなく、世間話もする。
夕方になると、東門市場は各国の料理が食べられるレストラン街に変身する。
ショッピングモールでも従来の市場のような売り場を設けて消費者に快適なショッピング環境を提供し、昔ながらの市場の人情を取り入れている。