自然との結びつき
鉄道は、人と人とを結び付けるだけでなく、人と大自然をも結び付ける。
林務局と台鉄局が共同で生み出した里山動物列車は、通勤電車の車体に、山林、河川、水田湿地、村という4種の里山生態系が描かれ、そこに生息するタイワンオナガ、カニクイマングース、ハクビシンなども、愛らしいイラストになって、まるで乗客を歓迎してくれているようだ。
車内も天井から床、吊り革にいたるまで絵で埋まり、里山動物のイラストを配した身長計も描かれている。また、台湾産木材で彫られたベンガルヤマネコの立体像も座席に座っていて、通りかかった客が頭をなでていく。見上げると木彫のタイワンゴシキドリがいるかもしれない。しかもこれは観光用列車ではなく、普通の通勤路線を走るので、運よく乗り合わせた地元の人にも人気だ。お母さんが隣の子供に「今日は森の中に来たわね」などと言っているのを見かける。
「里山」という言葉は、最近よく耳にするが、「里山」とは地名ではなく、低海抜地の人里に近い山や丘陵、草原を指し、そこには二次林や渓流、畑などがあり、そこに生息する野生動物を里山動物という。里山には人も頻繁に出入りし、集落や道路を作るので、動物の生息地を分断したり孤立させて動物の移動を阻んだり、道路を渡る動物を車でひいてしまったり、或いは動物が農薬や毒餌を食べてしまうこともある。そこで、国土生態グリーン・ネットワーク・プロジェクトが立ち上がった。
林務局が、農業委員会のほかの部門や、交通部、経済部、内政部などの省庁、そして地方自治体とも協力したプロジェクトだ。それは、東西に流れる河川に沿って造林し、動物たちが通る回廊を作ったり、高速道路周辺にネットをめぐらしたりして動物が路面を渡れなくするとともに、動物を高架通路や地下道に誘導して道路を渡れるようにするものだ。或いは、自然にやさしい農業を推進し、生態系の維持に努める。
里山動物列車は、人々と生態とを結びつける場となっている。生態のさまざまな様子が車内のモニターで見られるし、或いはQRコードを読み取れば、我々と同じ大地に暮らす生物たちについて詳しく知ることができる。林務局の管轄下にある各林区管理処でも、里山動物列車に関連した生態ガイド・プログラムを企画してきた。
第5回台鉄弁当フェスティバルのPRビデオで、作家の劉克襄がこんなことを語っていた。彼は鉄道利用時には必ず駅弁を買って乗り、それを食べながら風景を楽しむ。そしてひと気のない小さな駅で下車し、ゆっくりと散歩したり山に登ったりして、そこにどのような暮らしや風景があるかを見て回ると。
里山動物列車に乗って「生態の旅」に出かけてみるのはいかがだろう。すばらしい鉄道の旅がそこから始まるかもしれない。

台北駅地下一階の空港MRT通路に設けられた弁当本舗は古い列車の形をしており、人目を引く。

台湾鉄路局は弁当フェスティバルで昔の鉄路レストランを再現した。

鉄路弁当のおいしさは、新鮮で質の良い食材と料理人たちの思いが支えている。

福井鉄道文化館ではレトロな旅が楽しめ、鉄道文化を保存しようという陳朝強の強い思いが感じられる。

福井鉄道文化館ではレトロな旅が楽しめ、鉄道文化を保存しようという陳朝強の強い思いが感じられる。

福井鉄道文化館ではレトロな旅が楽しめ、鉄道文化を保存しようという陳朝強の強い思いが感じられる。

陳朝強は、弁当のわずかな売上をすべて鉄道文物のコレクションに投じてきた。

国産の木材で作られたベンガルヤマネコの彫刻が、座席に座って乗客を待っている。

鉄道の旅の良さは美食と景色、そして自然とともにある喜びにある。