生物多様性のためのオープンデータ
台湾は「生物多様性条約」の締約国ではないが、これまで14回開かれた締約国会議に「台湾は欠席したことはない」と、かつて台湾を代表して参加した林務局保育組生息地運営科長の石芝菁は胸を張る。生物に対する責任感から、台湾政府は、「生物多様性条約」が締結された翌年に「全球変遷政策指導小組」(現在の「国家永続発展委員会」)を発足させた。また、民主的で開放的な台湾社会では、国民の公民意識は高く、それも生物多様性推進の大きな力になっている。
オープンデータを例に取ろう。生態の研究や生物の保全、関連政策の策定や推進において、最も重視されるのは科学的な資料やデータである。現在、国際的には「地球規模生物多様性情報機構(GBIF)」がグローバルな生物多様性情報の開示と国家間の連携を推進している。GBIFが発足すると、台湾はアソシエート‧パーティシパントとして加入し、同時に「台湾生物多様性情報機構(TaiBIF)」を設立し、アジア地域における重要な拠点となった。
さらに昨年、中央研究院生物多様性研究センターと内政部営建署、海洋委員会海洋保育署、農業委員会林務局、林業試験所、ESRIの6部門によって「台湾生物多様性情報連盟(TBIA)」が結成され、クリエイティブ‧コモンズなど公にライセンスする方式を通し、公的部門内部の資料をオープンにしている。
オープンデータは公的部門にとっても民間にとっても有益である。TBIA秘書処のメンバーはバイオ分野の出身で、彼らは異口同音にこう語る。フィールドワークは気力と時間のいる仕事で、研究者がすべての力を注いでも、せいぜい数十年分のデータを蓄積することしかできない。しかし、生物研究には数十年から百年の尺度が必要なことが多く、その蓄積によってようやく変化の趨勢が見えてくるものだ。「そこで、他者の研究資料を統合することができれば、これらの時間や空間の隙間を埋めることができるのです」とTaiBIFコンテンツマネージャーの劉璟儀は言う。
TBIAの設立は、台湾政府がデータを公開する決意を示している。これは多くの人が公的部門に蓄積されてきたデータの成果を知ることにつながるだけでなく、重大な公共政策の策定において参考となる客観的なデータを提供することにもなる。これらのデータを特定の標準と規範に従ってTaiBIFで公開すれば、GBIFとつなげることができ、データの存在がさらに広く知られることになるだろう。
花蓮市内に出没するタイワンオオコウモリは目立たない存在だが、果物を食べるこのコウモリは森林の生態系を豊かにする重要な生物種である。(鄭錫奇撮影)