大学間の協力
昨年の母の日前のシーズン、真理大学の李沿儒教授は学生を率いて山地を訪れ、先住民と契約栽培を交渉し、3~4ヶ月をかけて桃で果実酒を作ることにした。復興郷の桃はデリケートなので、運送会社は運搬を請け負おうとしない。そこで学生たちは自ら産地を訪れ、学校の加工設備を用いて農家の物流問題を解決し、大学108校の力を動員して復興郷の桃のチャリティ販売を行なった。学校の購買力は強く、非常によく売れた。
このような慈善の物語は少なくない。高雄美濃の白玉蘿蔔という大根は、収穫後1~2週間で売れなければ価格は大幅に下がってしまう。そこで農家を助けるために、酷点校園では産官学協力を計画した。学生たちが農村へ行き、日本と客家の技法を活かして漬物を作り、作物に新たな価値をもたらした。こうした過程で学生たちは自分たちには社会に役立つ力があることを知り、大学も社会的責任を果たすことができる。
大学生は熱意があり、人の役に立ちたいと思っている。チャリティ販売会などを開くと、迪化街の店舗は多くの人でにぎわう。大学の教職員や卒業生が強力な人脈となり、共同購入も多い。EMBAの授業で黄丙喜は「企業の経営者が手を挙げれば、それだけで300個、500個と売れます。最大の顧客となるのです」と語る。大学の卒業生の力は大きく、文化大学一校だけで100万人近くになるのである。
酷点校園はこのパワーを横につなぎ、台湾各地の大学が、シーズンごとに旬の農産物を選び、チャリティ販売を行なっている。社会の役に立つと同時に、自分たちの創意とマーケティングの力を試すこともできる。
起業の道に寄り添う
「常に実践している原則は、学生たちが自ら手を動かすということです」教員は指導はするが、学生が人の手を借りてはならない。心配なこともあるが、任せることで学生は何とか乗り越えられる。「学生は思っているほど弱くありません。チャンスを与えれば、自分で学ぼうとするのです」と学生たちの起業に寄り添ってきた黄丙喜は感慨を込めて語る。
大学をつなぐ酷点校園のチャリティ活動は拡大していき、今では世界にも向けられるようになった。2017年にエチオピアでゴミの山が崩落して多くの死傷者が出た時、台湾科技大学でもエチオピア出身の留学生が少なからず学んでいた。そこで酷点校園ではOKLAOコーヒーと協力し、フェアトレードの価格でエチオピアの小規模農家から直接コーヒー豆を購入した。そして専門技術を用いて焙煎し、酷点校園のパッケージを施して販売し、その売上をエチオピアの現地に還元したのである。
さらにOKLAOコーヒーはエチオピア人留学生6人に、コーヒーの専門知識を教えた。帰国した彼らは、そのコーヒーで2018年、アフリカのコーヒーコンクールで優勝したのである。小さな善の行ないが、台湾とエチオピアに深い友好の絆を生み出した。

台湾各地の大学が結成した「台湾夥伴大学善益農場」は、大学の社会的責任を果たし、弱小農家の作物の付加価値を高め、学生たちに社会の役に立つことの意義を教えている。