特色あるローカル線
小さな駅やローカル線の魅力が再び注目されて旅行者が訪れるようになり、もともと有名な平渓線や集集線のほかに、2014年には国立海洋科技博物館のオープンとともに、一度は廃止されていた深澳線も運行が再開された。
鉄道専門家の蘇昭旭に、どの支線が一番好きかと問うと、どの支線にも他にはない独特の風情があって捨てがたいと笑う。
「台湾を南北に結ぶ縦貫線(本線)をメインディッシュに喩えるなら、支線は副菜やおつまみのようなもので、それぞれに味わいがあります」と言う。
もともと人気のある集集線や内湾線、平渓線、それに一度は廃線になった旧山線、さらに国立海洋科技博物館の開館に伴って再開された深澳線など、蘇昭旭はそれぞれの魅力を語る。
「深澳線の魅力は何といっても海です」と蘇昭旭は言う。新北市の瑞芳から基隆の八斗子までを結ぶ深澳線は台湾の東北角海岸沿いの山と海の間を走り、日本の江ノ島電鉄のようにロマンチックな海岸の風景を楽しめる。深澳線は、台湾の支線の中で最北端を通る最も勾配が大きい路線である。この線路は、1936年の日本時代に日本鉱業株式会社が鉱物運搬のために金瓜石の山麓から港まで敷設した軽便鉄道で、翌年にはさらに深澳、八斗子、八尺門まで延ばされた。貨物輸送のための鉄道だったが、瑞芳と基隆の間を行き来する住民の重要な交通手段としても使われていた。
後に、自動車道の浜海公路2号線が開設され、また深澳火力発電所が閉鎖されたことにより深澳線は一度は運行を廃止したが、基隆の八斗子に国立海洋科技博物館が開館したことをきっかけに、ここを訪れる観光客のために営業を再開したのである。
海岸線を走る深澳線とは異なる景観が楽しめるのが、苗栗県の三義と台中市の豊原を結ぶ旧山線である。この支線も廃線となっていたが、クルーズスタイル観光列車によって運営を再開し、現在再び運行は一時停止している。ここでは桃源郷のような山間の美しい景色が楽しめる。
沿線には龍騰断橋や魚藤坪橋といった有名な鉄道史跡も数多くあり、世界遺産レベルの魅力にあふれている。蘇昭旭はこの路線を「縦貫線の起源」と呼ぶ。新山線の開通で廃線となった旧山線だが、1908年の完成時には特別な時代的意義を有していたという。
その話によると、北の三義から南の豊原までを結ぶ旧山線は、台湾西部を南北に結ぶ縦貫線の最後の区間として敷設された。当時、苗栗県以北と台中以南の南北の鉄道はすでに開通しており、旧山線が開通したことで、台湾を北から南まで結ぶ大動脈が全線完成したのである。このような重要性から、当時は「旧山線の開通で全台湾がつながった」と言われたのである。
作家の劉克襄が「到達できない駅」と形容した山里駅では、忘れ去られた秘境駅の雰囲気を味わえる。