彼らは何を見ているのか?
台湾の読者は、この本を通して台湾に暮らすフィリピン人女性移住労働者の生活と心情を理解できるだけでなく、彼女たちの目を通して、より鋭い視線で台湾社会を見つめることもできる。
異国から来た彼女たちは、台湾社会の細かい面に特に敏感なようだ。例えば、深夜にネオンに照らされたスケルトンの店で一人でビンロウを売る女性、毎日自分で料理を作り洗濯をする老婦人、西門町で背広を着て靴紐を売る老人、台湾の便利な郵便システムなど、その精確な観察と関心には敬服させられる。
もちろん、彼女たちは台湾の多くの問題も観察している。例えば、この本の最初の写真「万国旗」には、台湾、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、日本、韓国の国旗しかない。先進国を崇拝し、途上国を見下す台湾の国際的視野の狭さを突出させた作品だ。高級靴店の写真は、富への憧れと貧富の差という現実を訴える。最後の数枚の、工場閉鎖に抗議する人々の写真と、豪華なオフィスビルと老朽化した従業員宿舎の対比は、いずれも台湾の労働者にとってはごく身近な情景であろう。
この一冊は、「解釈する者」と「解釈される者」の位置を入れ替えた。移住労働者が能動的な観察者となり、鋭い目で台湾社会をとらえ、そこにおける自分の境遇を見つめる。出版者である「台湾国際労働者協会」は作品にインドネシア語とベトナム語のキャプションもつけ、撮影者一人ひとりのプロフィールも紹介しており、創作者に対する敬意を感じさせる。
台湾の移住労働者の人権に関心を寄せる者にとって、この本の出版は喜ばしいことである。今後もより多くの職種のより多くの外国人労働者が、台湾の友人たちの協力を得て表現能力を発揮し、この土地で彼ら自身の声を発していってほしいものである。
書名:『凝視駅郷(Voyage 15840)』
プラン:台湾国際労働者協会
出版日:2007年5月
価格:500台湾ドル
「これは私が寝る部屋のドア。鍵はずっと差し込んだままで、私には鍵を抜く権利はない。つまり私にはプライバシーがないということだ。私が熟睡している時でさえ、誰でも部屋に入ってこられるのである」/写真:Cyd Charisse B. Sannoy
「これは毎日私に笑いを与えてくれる唯一の人。彼女がいなければ、私の毎日はどんなにつまらなく、どんなに家を恋しく思うことだろう」/写真:Gracelyn G. Mosquera
「郵便ポストは便利なものだ。郵便局まで行かなくても出すことができるので、忙しい人は助かる。フィリピンでは郵便局に行かないと手紙は出せない」/写真:Edcel Benosa