百年前の古い写真を求めて
旧台南州庁の築百年を迎えるにあたり、文学館では特に日本の建築家・森山松之助の子孫を訪ね、森山が1921年に日本に帰国した後に設計した銀座や新宿御苑の建物を見て回った。
陳益源館長によると、日本統治時代には森山松之助など、日本の若手建築家が西洋から学んだ建築の理想を台湾で大胆に実現したのである。日本に帰国した彼らの建築物には台湾文化の影響も見て取れる。例えば、森山が設計した新宿御苑の旧御涼亭には台湾の閩南式建築の要素が取り入れられている。
台湾文学館では「古い写真を募集、あなたの物語を聞きたい」というイベントを行ない、広く台南州庁に関わる写真や文章を募集した。
2014年、台南二中開校100周年に当たり、同校出身の詹翹は、メディアでの経験があり、台南市文化遺産保護協会理事も務めていたことから、校史編纂を依頼され、その作業を進める中で台南州庁の古い写真を少なからず発見した。これを機に、人知れず保存されていた多数の貴重な史料が見つかり、多くの人が百年前の台南州庁の姿を目にすることとなった。
これは総督府台南中学校の学生たちの記念写真で、背景に台南州庁が見えるだけだが、側面のレンガの壁は、将来の増築のためにアーチ形の通路だけが付けられているのがわかる。
「この写真は非常に貴重なものなので、発見した時は興奮しました」と台湾文学館展示教育組の研究助手・王嘉玲は言う。台南州庁は二度にわたって増築されていたが、残されている記録は文字と青写真だけで、発見されていた写真の大半も増築後のものだったのである。
百年前の台南州庁周辺の様子は、郭宣宏が収集していた絵葉書からも発見された。郭宣宏は古い写真や古い絵葉書の収集を趣味としており、数百枚をコレクションしている。その中の何枚かに、台南州庁が建てられる前の様子が写っていて、後に台南州庁が建てられた場所は、ただの空地になっているのが見て取れる。
詹翹と郭宣宏は一世代分の年齢差があるが、同じ台南二中の出身という縁があり、台南に深い思いを抱いているため、大量の写真や史料の中からすぐに目的のものを発見で来た。「私たちが二人とも台南に詳しい地元の人間でなければ、古い写真を見ても単なる日本時代の写真で終わってしまったでしょう」と郭宣宏は言う。数年間台北で働いていたことのある郭宣宏は、台北では北門や南門などの古跡を保存して宣伝しているのを見て、感じるものがあった。台南には、赤.r楼や郵便局、測候所といった古い建築物が多数あり、古跡の再生や旧市街地復興を論じる資格は台北よりあると感じていた。
台南観光では古い町並みや古い建築物を訪ねるのが定番になっており、旧台南州庁を再生した台湾文学館は欠かすことのできないスポットだ。 (荘坤儒撮影)