1972年生まれの青木由香さんは、子供の頃から絵を描くのが好きで、多摩美術大学染織デザイン科を卒業した。日本の多くの若者と同様、できるだけ海外へ行って見聞を広めたいと思っていたが、台湾については「こんなに近いんだから年を取ってから行けばいい」と思っていたそうだ。
2001年、当時すでに35ヶ国を歩いた彼女は初めて台湾に来た。そこで、まず足裏マッサージにはまり、続いて台湾茶の魅力に取り付かれて、最初はあまり興味のなかった宝島・台湾が大好きになった。
明るく、いつも笑っている青木さんは、日本では仕事のストレスが大きくて生活のリズムが速いが、台湾ではゆっくりとリラックスして暮らせると言う。それに台湾は人情味にあふれ、外国人にも友好的だ。しかし何よりも「マッサージは気持ちいいし、お茶はおいしいし、食べ物もおいしすぎる!」と言うのである。
一番のお気に入りは活気あふれるナイトマーケットだ。臭豆腐や葱抓餅(ネギ焼き餅)、タピオカ入りミルクティなど「へんな食べ物がいっぱい」だからだ。夜市は日本にもないわけではないが、お祭りなどの特別の日に出るだけで、台湾のように毎日あるわけではない。台湾の夜市には中華と世界の料理が集まっている。
デザインを学んだ彼女は、台湾と日本の両方で収入を得る方法を考えた。イラストやデザイン、写真などの方法で日本の雑誌で台湾を紹介し「台湾人が日本人の金を稼ぐ手伝い」をしている。こうして台湾に定住して中国語を学び、定期的に日本から送られてくるデザインの仕事もしている。
去年、彼女は中国語と日本語対照の著書『奇怪ね:一個日本女生眼中的台湾』を出した。日本人として観察した台湾人の日常生活をユーモラスな語り口とイラストで表した内容で、台湾と日本の生活習慣の違いがわかるおもしろい作品だ。文章もイラストもデザインもすべて彼女が手がけた。
例えば、台湾人はカラオケに行くとマイクを奪い合って各自が勝手に歌い、他の人が歌っている時は聞かずにそれぞれ好きなことをするが、日本人はやはり礼儀正しく人の歌を聞く。台湾人は道をゆっくり歩き、後ろの人が急いでいるかどうかなど気にしないが、日本人は「忍者」のように常に警戒して歩いているという。また、台湾ではどこでも使われている紅白の縞模様のビニール袋を、彼女は台湾の「国袋」と命名する。
こうした率直でナンセンスなスタイルが受け、この本は台湾でベストセラーになった。しかし、やや高齢の「愛国者」はあまり気に入らないようで、内容の多くはステレオタイプのイメージに過ぎないという声もある。しかし彼女は「私は台湾が大好きなんです」というスタンスの本はおもしろくないと思っている。両国の文化にギャップがあり、それを「台湾は奇怪ね」と感じたからこそ、彼女は台湾が好きになったのである。
今、彼女は台湾人と同じように約束の時間に遅れるし、年末には迪化街へ買出しに行くし、永楽市場に作品の額に使う布地を買いに行く。本の巻末に「台湾人になる日」という後書があり、台湾で一生懸命に暮らし、中国語をマスターしたいという気持ちが書かれている。台湾好きが高じて定住し、異郷に適応しようとする青木由香さん。いつか異郷が故郷になる日が来ることだろう。
フリーライターの青木由香さんは、自作のイラストや写真、そして文章で台湾での生活のあれこれを記録している。
フリーライターの青木由香さんは、自作のイラストや写真、そして文章で台湾での生活のあれこれを記録している。