政府と民間の両方で
文化部部長(文化相)の李永得は文学の国際交流を重視し、台湾文学がさらに広く世界に歩み出すことを目指す。人文司「翻訳出版奨励計画」は確かに文学の国際交流を促進していると考える林水福は、かつて文化部から派遣されて東京の台湾文化センターの初代主任を務めた経験から、こんな提案をする。「定期的に作家団を組んで海外でプロモーションを行うのはどうでしょう。現地の在外公館文化センターと協力するのがいいでしょう。その国の出版社や読者の注目を集め、台湾書籍の国際化に必ず役立ちます」
「漫画の場合、台湾の作家は1冊完結の単行本が多いですが、海外の読者は全何巻に及ぶものを好みます」と、陳瑩芳は海外の事情を紹介する。海外では、台湾の作品の中でも中長編で物語性のある作品に期待を寄せている。光磊国際版権経紀有限公司は2009年から中文書籍の著作権エージェント業務を行い、世界34ヶ国で華文作家のライセンス契約をしてきた。同社の謝孟容によれば欧米読者が好むのは「感動を呼ぶものやエコロジーなど世界で普遍的なテーマ」だという。例えば1979年の台湾のSF小説『緑猴劫(緑猿禍)』を時報出版が2020年に再版したのは、現在を予言するかのように同作にはウイルスとの闘いや起源探しが描かれているからで、国際市場にも受け入れられやすい。
光磊版権公司は華文作家の著作権エージェントの経験を元に、「文化内容策進院」の主導によるプラットフォーム「Books from Taiwan(略称BFT)」を運営する。これは官民協力の好例だ。BFTでは国内の出版社に作品を応募してもらい、毎年400作品から52作を選ぶ。2014~2021年には394作品(一般書籍224冊、児童書97作、漫画73作)の版権を、31ヶ国(24言語)と契約した。BFTの著作権ディレクターである劉孟穎は、国際書籍市場は現在もなお欧米中心なので、欧米読者の好みに合う編集をすれば自ずと海外とのつながりが生まれ、彼らの口コミによって多くの国に作品を売ることができる、と指摘する。陳瑩芳もこう言う。台湾の良書のために政府と民間がそれぞれの長所を生かし、海外とのライセンス契約で輝かしい成績を上げたいと。
台湾は、海外のブックフェアの機会に座談会やサイン会などを開き、海外の読者に台湾の図書の多様性に触れてもらう機会を作っている。写真は2022年、フランス‧アングレーム国際漫画祭台湾館で開かれた座談会。(文化内容策進院提供)
林水福は、在外公館文化センターと協力して多くのイベントを催し、その国の出版社や読者の注目を集めれば、必ず台湾の出版物の海外進出の力になると考えている。
文化部人文司の翻訳出版奨励計画は、出版業界に国際市場を開き、海外の読者に台湾の図書の素晴らしさを知ってもらうのが目的だ。写真は、スロバキア大使夫人の梁晨氏が橋渡ししてスロバキア語に翻訳された台湾の出版物。
イタリアのボローニャ国際児童図書展は世界の出版業界にとって年に一度のビッグイベントで、台湾も必ず参加している。写真は2022年、同図書展の台湾館の主催で、台湾とブラジルの出版関係者が版権について話し合う様子。(文化内容策進院提供)