世界との競争
WTO加盟後、我が国の農産物輸出は予想を超える高い業績を上げてきた。呉佳勲によると、加盟前の大方の予測では、輸出額増加は1.6億元ほどと見られていたが、実際には2002-2009年の輸出額は17.2億元増となったのである。
これについて、以前我が国のWTO代表団農業参事を務めた農業委員会国際処の張淑賢処長によると、WTOの基本精神である「最恵国待遇の原則」の下、すべての加盟国は関税を引き下げなければならず、だからこそ台湾の農産物の輸出機会が増えたのだと言う。
また「貿易の国連」とも言えるWTOにおいて、台湾の代表は他の加盟国と平等な立場で積極的な交渉を進めており、大きな成果をあげている。例えば二国間動植物検疫交渉において、2004年に米国の検疫障害を突破し、台湾は世界で唯一コチョウランを培地をつけたまま米国に輸出できる国となった。コチョウランは台湾で最も有力な輸出農産物であり、2010年の輸出額は30億台湾元、対2002年比で372%成長している。
一方、貿易の自由化によって刺激を受け、ブランド化や品質向上など、グレードアップを果たした分野もある。
農業委員会の統計によると、2010年の農産物輸出額成長率のトップ5はウナギ、コチョウラン、ハタ、スズキ、オンシジウムで、これらは近年の主力輸出項目だ。呉佳勲によると、貿易自由化の洗礼を受け、以前は内需中心だった農産物が輸出の力をつけてきたという。
ただ張淑賢は、米などの一部の農産物は品質は良いが原価が高いため輸出競争力は高くないと言う。また、食料安全保障の考慮もあり、米は輸出をメインにはできない。黄美華も、米は内需を優先し、それが確保できて初めて輸出を考えるべきだと言う。農糧署では米の輸出に総量と最低価格と品質の制限を設けて管理しており、国内の供給量と国際価格の変動に伴って調整している。今年上半期の国内の供給量に問題はなく、輸出は3万トンまでとしている。
2月に新内閣が発足した。農業委員会の陳武雄・前主任委員と陳保基・現主任委員は、いずれもWTO交渉に豊富な経験を持つ。陳武雄は台湾がWTOに加盟する際に農業交渉の首席を務めており、引き継ぎの際、新任の主任委員に「農業を貿易自由化の足かせにしてはならない」と語った。FTA(自由貿易協定)やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などへの対応策を早急に打ち出してこそ、農業の競争力を向上できる。
貿易が自由化されると、その扉を再び閉じることは難しい。WTO加盟から十年、農業の挑戦は始まったばかりである。
農業人口の流出が進む中、若者が農村へ帰れば農家の平均年齢は下がり、生産力も高まる。写真は宜蘭県の農家の頼嬌燕さん(左)と弟の頼君旺さん。