シングルペアレント
「母さんの苦労はあなたには見せない/その心には暖かいレシピがある/もっとその手を握ってあげよう/手をつないで一緒に夢を見る/母さんの言うことを聞こう、その心を傷つけないように/早く早く大きくならなきゃ彼女を守ってあげられない・・・」
歌手ジェイ・チョウ(周杰;倫)が作った「母さんの言うことを聞こう」の歌詞だ。この歌は多くの小学校教員を感動させ、音楽教材に採用されている。しかし、よく聞くと、一人親家庭で育った周杰;倫の重い心が感じられる。
香港の俳優トニー・レオン(梁朝偉)はマスコミのインタビューを受けた際、自分がまだ結婚しないのは両親の離婚の影響で、普段の憂鬱そうな表情も少年時代から変わらないと語っている。
離婚した一方の親に育てられる子供は、現在では少数派ではないが、幼少期に受けた傷は深く、大きくなっても心の奥深くにしまわれていて、なかなか人に見せることはない。中にはその傷の存在を忘れようとする人もいる。
「私は今すごく幸せだし、楽しくて」台北の有名高校1年生の小玟;は健康的で明るく、幼い頃にさまざまな家庭を転々としてきた早熟な少女だと知る人は少ない。
5歳の時に両親が離婚し、小玟;は突然母親から引き離され、田舎で父親と祖母と一緒に暮らすことになった。小学2年の時に叔母に引き取られ、1年ほどそこで居候生活を送る。小学3年の時に父は再婚し、継母と、血のつながらない姉と弟の家庭に入り、アメリカへ渡って寂しい2年間を過ごす。小学5年になるまで、小玟;はその家庭に馴染めず、夢の中で叫んだり殴ったりしていた。その後、継母の計らいで彼女だけ台湾へ戻って生母の下へ帰った。小学校の6年間で彼女は4つの学校、4つの異なる家庭を転々とし、さらに2つの異なる言語・文化を経験しながら不安と恐怖の中で過ごしたのである。
「小さい頃は、お母さんのいない自分がかわいそうだと思いました」と小玟;は穏やかに語る。父親からは、お母さんは浮気をして子供を捨てた「悪い女だ」と聞かされ、母親の写真さえない環境で育ったため、母親のイメージはほとんど消えかかっていた。
アメリカでの2年半は最も辛い時期だった。父親は就職するための英語の勉強に、継母は仕事に忙しく、血のつながらない姉弟は彼女をいじめた。小玟;は話し相手もなく、2年余りの間、彼女には一本の電話さえかかってこなかった。「毎日、学校の図書館で山のように本を借りてきて家で読んでいました。借りた本の数はクラスで一番でした」と言う。おかげで英語の読解力は伸び、それが唯一の収穫だった。
「会った瞬間に抱き合って泣きました。何を泣いているのか分かりませんでしたが」継母が、公園で彼女と生母を会わせてくれた時のことを思い出し、小玟;は他人の物語を語るように穏やかに話す。取材をする側が耐え切れずに涙を流すと、小玟;もようやく眼を潤ませた。
親の離婚による心の傷には、関心を寄せて慰める必要があるが、子供は本音をなかなか語ろうとせず、学校も能動的に聞こうとはしないため、カウンセリングやサポートの体制強化が求められる。