大埔小学校のアーチェリー
もう一つ、武術と同様に「心の鍛錬」を重んじるのはアーチェリーである。
アーチェリーは我が国が国際大会で優勝できる数少ない競技種目の一つで、新北市三峡区の大埔小学校は台湾のアーチェリー選手育成重点学校である。
大埔小学校のアーチェリー・チームは設立20年、当初は学校の特色を打ち出すために始めたのだが、生徒たちが強い興味を示したので、学校は教育部に訓練費と設備の補助を要請し、さらに国家レベルの専任コーチを招いた。以来、さまざまな大会で入賞するようになり、学校全体でアーチェリーが盛んになった。
同校では4年生になると、週に1回アーチェリーの授業を受ける。練習の前には集中力を高めるために瞑想し、それから徒手で弓を引く基本姿勢を学び、その後で的を狙い、力を入れ、矢を放つという正式な訓練に進んでいく。
こうした動作の繰り返し練習は退屈なので、子供たちの楽しみを増やすために、アーチェリーコーチの郭旗顕は「一射成鳴」というゲームを考案した。放った矢が的の球に当るとファンファーレのような音が鳴るようにしたのである。
澄んだ心で的を射る
コーチの郭旗顕は、アーチェリーは高度な力学だと言う。一本の矢の重さは金属部分の先端に集中しており、射る力を加えるのは末端部分なので、弓から放たれた直後の10メートル、矢は左右に蛇行しながら飛び、その後に直線になる。
矢を弓から放つ瞬間、選手は的の中心点と、力を用いる方向や角度などの力学を計算し、順序に従って動作する。正式の競技の多くは一対一の対決で、団体戦でもチームメイトが助けることはできないため、緻密な思考ができ、プレッシャーに打ち勝てる者でなければ勝つことはできない。アーチェリーで優れた成績を上げる生徒の多くは、冷静沈着で内省的だという。また落ち着きがなく、活動的な生徒は、これを繰り返し練習することで情緒をコントロールし集中できるようになる。
武術とアーチェリーは品格を育てる心身合一のスポーツで、子供にとってはやや退屈かも知れないが、人生の基礎固めに大いに役立つのである。