人権のテーマは先住民のテーマ
毎回の勉強会の過程で、LIMAのメンバーは、いずれのテーマも互いに関連しあっていることに気付いた。例えば、先住民の労働権を論じていくとジェンダーというテーマにつながっていく。どのテーマも互いに関連しているため、メンバーがそれぞれの専門分野を発揮し、関わる分野を広げ深めていく必要がある。
一般に、先住民をめぐるテーマは教育と文化に関わると考える人が多いが、洪簡廷卉は、人権に関わるすべてのテーマは先住民のテーマであると主張する。先住民族は血縁上、非先住民族と異なるだけではない。すべての人類が遭遇する人権問題は、どれも先住民と密接に関わっており、単に教育や文化のテーマに限定するべきではないのである。先住民族が文化保存の問題に直面した時、それは居住環境や雇用機会などとも関わってくる。しかし、現在の先住民問題では政策討論や方向性の面でも、先住民族が参加することは極めて少ない。関連するNGOの間でも先住民族に対する理解不足から交流や協力も少ない。そこで、LIMA台湾原住民青年団はより積極的に教育や文化以外の議題に関わろうとしており、国内外の大型会議や条約審査などの場でもLIMAの姿が見られる。
台湾は国として国連に参加することはできないが、それでも国際人権保障体系の根本を成す「市民的及び政治的権利に関する国際規約」と「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」を批准して国内法化し、国連の方式を採用して、審査のために国際人権専門家を招いた。
LIMA台湾原住民青年団は、結成した最初の年に、この二つの国際人権規約の審査会議に参加した。国際人権規約の審査の過程では、政府による国家人権報告書と民間団体によるカウンターレポートが提出された。専門家は人権規約の内容にしたがってリスト・オブ・イシューズを出し、不十分な点や不明確な点について国の代表と民間代表とともに討論した。数日にわたる審査会議の末、委員会は「総括所見」を作成した。所見に挙げられた意見に対して政府各省庁は報告を提出し、民間団体は政府による関連法規や措置の修正を見守ることとなった。
その後、国家人権報告書を作成する前、政府はNGOとの会議を開き、LIMAもこれに出席した。LIMAのメンバーは国家報告の内容に習熟しているだけでなく、2013年の最初の審査で委員から出された総括所見の81項目についても幾度も議論しており、その後の政府の修正に関する会議にも出席してきた。今年初め、国際人権専門家による2回目の審査が行われ、最初の所見に対する改善状況が審査された。この2回にわたる国際人権規約審査の間、LIMAおよびその他のNGOは定期的に政府による改善の進捗状況を追跡してきた。放射性廃棄物の問題や、政府の実施効率など、改善に限界のある部分もあるが、LIMAのメンバーは常に忍耐強く各省庁とのコミュニケーションを続けてきた。
「市民的及び政治的権利に関する国際規約」と「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」の他に、LIMAは2014年、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(CEDAW)の審査会議にも参加した。今年末には「児童の権利に関する条約」や「障害者の権利に関する条約」などの国際審査会議にも出席することになっている。
条約の審査に関わるに当り、LIMAのメンバーは大量の資料を消化し、数えきれないほどの会議に参加しなければならない。そのプロセスは大変だが、これらを通してLIMAは国際会議での経験を台湾に持ち帰っている。さまざまな条約の内容を相互に照らし合わせ、それらを国内の法律とどう結び付けていくか、メンバーの勉強会の内容はますます深まり、さらにフィールドワークでの観察や先住民集落での生活経験も国際審査会議で伝えていく。ここからさらに、政策の策定に集落の生活を反映させ、メンバーは会議で得た収穫を集落に持ち帰り、これまでとは違う思考や手段を生み出していく。
先住民族の若者の力を結集し、洪簡廷卉(一番左)とLIMAのメンバーは国際会議に参加する機会を積極的に求めている。