時間との競争
「台湾は電気自動車産業の発展に有利なポジションにあります」と、李俊忠副社長は分析する。ガソリン自動車の開発に台湾は後れを取り、タイミングを逃してしまったが、エネルギー革命が進行し、世界の自動車メーカーと産業チェーンの再編が進んでいる。先発するロードスターとMINI Eの革新部品は、すべて台湾メーカーが研究開発したもので、たとえばモーターは金富田と公準精密が提供し、コントローラーは致茂電子、電池は必翔電能公司が供給しており、台湾の技術がリードしていると言える。
次いで、電気自動車はクラウドとIT技術の統合が必要となるが、これも台湾に強みがある。クラウドはユーザーの充電問題を解決できる。次の充電ステーションはどこにあり、目的地からどれだけ離れているか。お昼の食事時に、充電必要時間はどれだけか、コーヒーを飲んでから車に戻れば十分なのかなど、こういった情報は車に設置したインテリジェント・デバイスや携帯電話、ノートPCで取り込むことができる。
三番目に、台湾の環境は電気自動車向きである。面積が狭い台湾は、モデル走行で充電ステーションのインフラを全島に設置できる。環境保護概念が浸透したユーザーは、電気自動車の受容度が高いし、政策のインセンティブ(台北県は電気自動車の駐車と充電の無料化を検討している)が、普及に大きな力となる。
しかし、こういった優位性はこれまでも存在していたのである。世界の大手メーカーが電気自動車の開発を積極的に進めている中、台湾でもこの2〜3年で普及を進め、量産化に持ち込み、技術革新を実現し、コストダウンを図らなければ、優位性を維持して市場を確保することはできないだろう。
普及が進めば、サプライチェーン、充電モデル、クラウド、電池供給のビジネスモデルをコピーして輸出できると、李副社長は期待する。
電気自動車の時代を見据え、行政院は4月にインテリジェント電気自動車発展のアクションプランを採択し、6年間で97億台湾元の予算を組み、モデル走行、ユーザー環境の構築、購入優遇プラン、環境保護基準、産業指導プランを打ち出した。そして2016年までに、世界トップ10に入る電気自動車メーカーを育成し、国内販売年間4.5万台、輸出1.5万台を目標として設定している。
政府が打ち出したインセンティブ政策を、李俊忠副社長は高く評価しているが、それでもゼロからの電気自動車開発を、大きく育てていくには、現在の政策のインセンティブはまだ不足していると考えている。それでも時間との競争の開発の中で、政策の支持は大きい。努力の方向性が出てきた中で、受電ステーションやクラウドセンターなどのインフラが3年以内に整備され、そこで政策がさらに調整されていけば、台湾にも勝算が期待できる。
LUXGEN EV+は、排ガスゼロ、低騒音という電気自動車の特色を持つほか、インテリジェントデバイスも備え、クラウドとつないで各地の充電ステーション情報を得ることもできる。
裕隆グループが大陸の吉利自動車との共同開発で、ジーリー・パンダをアップグレードした電気軽自動車tobe。電池を除いた本体価格は50〜60万台湾ドルで価格競争力がある。
電気自動車の充電方法は通常2種類ある。ひとつは家庭用電力(110〜220V)を使用する方法だが時間がかかり、もうひとつは専用の充電設備(約400〜500V)を利用する方法で、こちらは速く充電できる。写真はMINI専用の充電設備。