大学の質の変化
だが、実用志向の学科が増え、大学は「職業訓練所」になったのかという疑問も湧いてくる。
王秀槐;副教授の研究によれば、新設学科の大部分(84%)が実用志向で、技術、経営、エンジニアリング、デザイン、メディア、環境、教育、ソーシャルワーク、レジャー観光などが多い。
特に私立大学では、巨額を投じて基礎研究設備を整えることができず、また学生のレベルから見て将来的に学術の道に進む可能性は低ことから、一層実用性を強調することとなる。そのため、私立大学では、文学、法学、商学、マスメディア、デザインなど、設立資金があまりかからない学科が好まれている。
こうした現象に関して、教育部高等教育司の陳徳華司長は、驚くべきことではないと言う。社会と産業の変化に連れて、人材育成機関である大学の役割も当然調整されていくもので、「知識の発展という角度から見ると、以前は焦点が絞られていたが、近年はしだいに枝分かれが顕著になり、こうした現象も必然の趨勢だ」と言う。
交通大学人文社会学部の戴暁霞学部長は「量の変化が質の変化をもたらす」と言い、高等教育のカリキュラムにはすでに変化が生じていると指摘する。以前は、学術性や理論性が低いとして大学教育から排除されていた領域が、今では新しい学科として次々に取り込まれている。従来のカリキュラムも、学生の能力や興味、ライフプランなどに合わせた調整が必要になっているのである。
シャッフル
大学教育が実用性に傾きすぎているという批判がある一方、産業界には、いまだに需要とのギャップが大きいという声もある。
これについて、教育部の陳徳華司長は、大学教育は急速に変化しているものの、学部学科の設置調整において、いまだに社会との連結が緊密でないと指摘する。
「ここ数年、教育部は大学の自主性に任せ、フレキシブルな調整を認めてきましたが、その成果は充分とは言えません」と陳徳華司長は言う。問題は、大学の構造が学部学科を中心としており、同じ学部内の教員の同質性が高いため、新たなアイディアが出てこないという点にある。現在の教員は、ほとんどが生涯にわたって教職を務めているため、新たな血を注がなければ、学科の名称は変えても、実質的に大きな変化は得られないのである。
そこで教育部は昨年、大学法を修正して学部の垣根を取り払い、学部学科を超えた調整ができるようにした。「将来的には、学部が学生を募集し、大学1〜2年は学科を分けないようにしていきます」と陳徳華司長は言う。
スポーツと健康とレジャーがブームになり、これに関するマネジメント人材の育成が大学教育の新分野となっている。