もう一つの橋を
鄭先生が「嘉義県外婆橋教育関懐協会」を成立させたのは、それより先に同様のプロジェクト「タイ北部へ愛を」を実施した経験による。募金活動などの経験が一度もなくて苦労したので、協会を設立すればパワーアップできると思ったのだ。そこで、李栄善校長や曾南薫校長に加わってもらい、協会を立ち上げた。すでに定年退職していた李校長は理事長を、鄭先生自身は事務局長を務め、地元の企業から支援を募った。
2015年夏休み、同協会による「おばあさんちへの橋」第1回が実現する。それより先の冬休み、「タイ北部へ愛を」の出発前に、松梅小学校の生徒が募金をしてくれたので、協会は第1回の里帰りの機会を、松梅小の林柏文ちゃんに与えた。当時の松梅小の曾南薫校長も途中から旅に加わって現地で5泊した。
旅に同行する先生は皆、何かを深く感じ、収穫を得て帰国する。曾校長はこう語る。あちらの子供の目には恐れのようなものが宿っている。小さな頃から妥協を強いられてきたからかもしれず、胸が痛むと。里帰りした子供は、母親の文化の豊かさを知り、複数の文化的背景を持つことに自信を持つようになる。梅松小の林柏文ちゃんは、持って行ったウクレレを演奏し、皆の称賛を浴びて自信につながっただけでなく、台湾に暮らす幸せと母への感謝をかみしめた。
協会の李栄善理事長は、「東南アジアから来たお嫁さんの成長を台湾の家族が阻むことがなければ、家庭教育に大いに役立つのだが」と言う。母親の実家で1~2ヵ月過ごせば、子供の言語学習の動機も高まり、彼らは台湾の将来を支える力となってくれるだろう、と曾南薫校長も言う。
李校長は協会の将来をこう考える。東南アジア行きに必要な一定の少額の寄付があればいい。ほかにも東南アジアの書籍を購入して町の図書館に置くなどして、彼らの文化的資源を増やしたい。協会がやるのは小さなことでよく、ただし長く、遠くを見据えて続けなければならないと。
「嘉義県外婆橋教育関懐協会」では、松梅小学校の林柏文さんと母親のカンボジア帰省を支援した。林柏文さんが奏でるウクレレに、郷里の人々は鍋をたたいて伴奏した。