微小部品がすべてを動かす
「私たちの身の回りには200個以上のモーターがあります。電動歯ブラシ、ヘアドライヤー、掃除ロボット、コーヒーメーカー、自動販売機など、私たちの暮らしにモーターは欠かせません」と、祥儀企業の創業者で董事長の蔡逢春は小さなモーターの重要性を語る。
新竹県竹東で生まれた蔡逢春は、兵役を終えた後、アメリカ系のTIMEX社で時計の技術者として働いていた。1980年に会社がフィリピンに移転することになった時、彼は起業を決める。家庭内の小規模工場として時計のヘアスプリングとバイクの回転数メーターの部品を生産し始めた。研究が好きな彼は、常にどうすれば自動化でき、よりシンプルに製造できるかを考えていた。そして1986年に桃園県樹林八街に工場を建て、多い時で月に100万個の部品を生産するようになった。
小型駆動部品生産の経験を積んだ彼は、1985年以降、ギヤボックスやギヤモーターの生産へと転換する。そして1990年、ドイツの電動工具メーカーであるボッシュが、アジアで電源駆動のサプライヤーを探していて祥儀に声がかかった。
こうして1995年から祥儀は電動工具用ギヤモーターをボッシュに納品するようになり、この関係は現在も続いている。
ボッシュ社の生産拠点がスイスからマレーシア、さらに中国の成都へと移ると、人事も変わり、企業文化も変化した。「どの転換点も大きなチャレンジです。台湾の中小企業は変化に対応しなければならず、時には頭を下げることも必要です。自社の強みと弱みをきちんと評価して対応することです」と蔡逢春は言う。製品の品質を確保することはもちろん、価格面でも顧客を満足させなければならず、祥儀は顧客との関係をうまく維持してきた。
以前は、部品ではなく電動ドリルの完成品を作る生産ラインに投資したこともあるが、完成品は在庫圧力が大きく、生き残るカギは技術力ではなく資金力になると感じ、再び核心技術に専念することにした。

祥儀企業の蔡逢春董事長はマイクロギヤモーターという核心技術をもって、サービスロボット市場にも進出した。