真理街の洋館の数々
淡水の真理街は両側に木々の茂る坂道だ。文化路から真理街の坂を上っていくと、淡水名物の阿給(油揚げに春雨を入れた料理)を売る店を何軒か過ぎた後、「リトルホワイトハウス」と呼ばれる清朝末期の関税務司官邸が現れる。さらに進むと、現在の淡江中学と真理大学の中にある、カナダ長老教会によって建てられた古い建物の数々が続き、最後に国の文化財である紅毛城にたどり着く。このように真理街には歴史を物語る西洋建築がずらりと並んでいるのだ。
真理街の終わりの方にある真理大学の正門は尖ったアーチ形のデザインだ。そこを入ると、彫塑家、楊英風の設計による庭園が現れる。優美なたたずまいのこの庭園は、観光客がまず足を止めて風景を楽しみ、写真撮影をするスポットであり、学生や近所の住民たちの憩いの場ともなっている。庭園の花や木々に囲まれた池に姿を映すのは、馬偕博士(Dr. George Leslie Mackay)の銅像だ。銅像の見つめる先は淡水河で、彼は淡水河からこの地に上陸した。銅像の背後には彼自身が建てた「牛津学堂」があり、庭園の脇には彼が自ら植えたというパンノキがそびえ、馬偕がこの地に注いだ情熱や貢献が感じられる。
ふと、軽やかな交響楽が聞こえてきた。向かい側にそびえる財経学院ビルの壁にある時計から流れてくる。真理大學広報係の何月妃係長によれば、「この大時計は50年余りの歴史があります。長年故障していたのを卒業生の寄付によって修復したもので、校歌や真理大學音楽学科の学生が作曲した音楽などを時報として流し、キャンパスの風景に別の彩を添えています」という。
その財経学院ビルのすぐそばにある大礼拝堂は、沈祖海建築師事務所の建築士であり、教会の長老でもある蔡栄堂による設計で、1998年に内政部(内政省)の優秀建築家賞に輝いた。外壁には「謙虚に祈る手」を象徴する尖ったアーチ形の窓が並び、大学正門のデザインと呼応している。ゴシック様式を模した建築は、東西両側に尖塔を置き、後方へ階段状にアーチ形の屋根が続く構造だ。この大礼拝堂はキャンパスの建物の中では比較的新しく建てられたもので、周囲の歴史的建造物と調和させるため、赤いレンガタイルを外壁のアクセントに用いている。
礼拝堂大ホールに入ると、国立コンサートホールさながらに、舞台に大きなパイプオルガンが座していた。台湾で3番目に大きなオルガンだという。何月妃の説明では「このパイプオルガンは45のストップ(音栓)と3240本の大小のパイプから成り、オランダ製の手造りです」という。大ホールの座席は階段状で2階分の高さがあり、1200人を収容できる。オークの椅子はわざわざアメリカから取り寄せたもので落ち着いた味わいだ。新型コロナが流行する以前は、ここでよくパイプオルガンのコンサートが開かれていた。