知らなければ危険
保健効果を謳うことのできない「保健食品」だが、マルチ商法やテレビ通販、スーパー、ドラッグストア、ラジオなどのルートで盛大に露出しており、すでに各家庭に深く入り込んでいる。そこで消費者の参考のために、現在の保健食品が持ついくつかの落とし穴を挙げる。
落とし穴1:成分は有効でも商品が有効とは限らない
台湾大学食品科学技術研究所の江文章教授によると、市販の保健食品の中には有効成分が少なすぎるもの、成分と規格が一致しないもの、他の成分の影響で効果が期待できないものがあるという。
例えばニンニクエキスの場合、ニンニクの有効活性成分は、コレステロールを下げて心血管の病気を予防できるが、空気にさらされると酸化し、高温では作用しなくなるなど、抽出過程で破壊されることが多い。したがって、自分が飲んだニンニクエキスのカプセルに効果があるのかどうか、消費者にはわからないのである。
コレステロールを下げ、脳の機能を強化するとされるレシチンは、原料に大豆と卵の2種類あるが、大豆から抽出できる成分は少なくて効果が劣るのに対し、卵のレシチンは純度が高い。しかし卵油に包まれていて一緒に飲み込んでしまうため、コレステロールが下がるとは思われない。
和信がんセンター病院薬剤科の陳昭姿主任は「レシチンを薬にしても効果はありませんし、食品にするには高価すぎて、お金を出してカロリーを買っているようなものです」と言う。
落とし穴2:「天然のものが一番」?
多くの人は「天然のものが一番」と思っているので、天然食品と聞くと、無害で身体に吸収されやすいと思う人が多い。しかし、実際はそうとは限らない。
「私たちの身体には、天然のものと化学合成物を判別する能力はありません」と和信病院の陳昭姿主任は言う。保健食品を買う際に注意すべきなのは「純度」が十分かどうか、有害物質は含まれていないか、という点で、天然かどうかは二の次だ。昨年、消費者基金会が市販のアガリクスを検査したところ、カドミウムが含有されているものがあった。飲み続ければ中毒に至る可能性もある。
「こうした問題は業界がきちんとチェックし、原料を慎重に選ばなければなりません」と楊燿銘さんは言う。効果は別としても、少なくとも安全性は確保しなければならない。必要な成分は含まれ、あってはならない成分は含まれていないことが大切だ。健康食品協会は消費者を守る機能を発揮するために安全性の審査を行なっているが、成果は上がっていない。現在のところ、協会の審査を申請して合格した商品は10点に満たないのである。
落とし穴3:こちらを立てればあちらが立たない
一般に保健食品の特殊成分含有量はかなり低く抑えられており、大量に飲まなければ人体に重大な傷害をもたらすことはない。ただし、何かの利になるということは別の何かの不利になるということで、その利害は自分で判断しなければならない。
例えば深海魚油EPAは中性脂肪を減らし、血小板の凝集を抑えて卒中を予防する。しかしこれを大量に摂取すると、血液凝固に時間がかかり、事故に遭って出血した場合、血が止まらなく恐れもあると陳昭姿さんは指摘する。アメリカの心臓病学界では、医師の指示なくEPAを摂るべきではなく、服用者は定期的に検査を受けるべきだと提案している。
また、人によって身体の状態が異なるので、流行を追って無闇に服用するのも考えものだ。最近は、シジミエキスが流行しているが、これも誰にでも合うわけではない。シジミエキスには肝臓で代謝されて尿酸になる「プリン体」が多く含まれているので、痛風の傾向がある人は飲むと症状を悪化させることになる。
落とし穴4:指示にしたがって服用する
保健食品には特殊成分が含まれているので、一般の食品のように気の向くままに服用してはならない。例えば、緑茶のカテキンには抗酸化作用があり、身体の活性を高めるが、これは他の食品と分けて服用しなければならない。
「カテキンには酸化還元作用があるので、他の保健食品や薬品と一緒に服用すると、その効能を中和させてしまいます。漢方で、緑豆には薬効を中和させる働きがあるので薬と一緒に食べてはいけないというのと似ています」と長庚生物科技公司の高啓震ディレクターは説明する。
グレープシードは空腹時に飲んだ方がよい。食物中のタンパク質がグレープシードの吸収を悪くするので、食後に服用したのでは効果は期待できないのである。
落とし穴5:謳われる効能が変わる?
多くの保健食品は厳格な試験を経ずに慌しく発売され、問題が出たら違う売り方を考える。また、薬品としての厳格な審査に合格できないものが保健食品の名で販売されることもある。
例えば、サメにはガンがなく、軟骨には血管新生抑制作用があると言われ、以前「サメ軟骨」はガンを抑制すると謳って販売されていた。しかしその後の実験で効果が限られていることが分かり、最近は関節に良いという謳い文句で売られている。
腸内の脂肪と結合するという「カテキン」は、当初はダイエット効果やコレステロール低下、消化機能の改善などの効果があるとされていたが、その後、人体はそれほど多くのカテキンを処理できず、ダイエット効果はあまり期待できないことがわかり、今度は関節炎に効く「可能性」があると言うようになった。
一時期大流行した後、忘れられていくものもある。
例えば、「プロアントシアニジン」が豊富なグレープシードは老化防止効果を謳って流行したが、期待したほどの効果はないというので下火になった。「老化に逆行するなど、簡単なことではありません」と話す楊燿銘さんは、老化のスピードを抑えられるだけでも悪くないと言う。ここからも分かる通り「保健」は時間をかけるべきものだが、消費者は即効を求め、数ヶ月の服用で一生の効果を期待してしまう。
衛生署の審査に合格した健康食品の多くは日常の食品で、一般にイメージする高価なサプリメントとは違う。