伯公廟で建築芸術を鑑賞
「合計238座の廟や祠、340体の伯公があります」これは、彭宏源が大湖地区全体を調査して得た数値だ。大湖郷大窩地区では「伯公遍路」ができる。老官路の北口から大寮村の大窩橋を渡ると、そこから約4キロ内に10座に及ぶ伯公廟がある。そのうち大寮村大窩12鄰にある伯公は、古い祠を鉄筋コンクリートの祠で覆ったもので、廟の中に祠がある形になっている。12鄰には現代アートのインスタレーションも置かれているが、その傍らにあるセンダン樹の伯公は石室の祠で、石屋根の四隅に反りがあり、供物台も石造りの素朴な祠だ。
大寮村の亀山福徳(伯公)祠は、やや派手な造りになっている。大きなガジュマルの木の下にある祠の中に伯公の位牌が祀られ、反り返った屋根や祠の扉にはレリーフが施されている。一般の廟に見られるような瓦や装飾をきちんと備えた屋根で、古式豊かな石板の供物台や、神を拝む際の膝置きも石造りだ。
三両三停駐車場から約1キロの範囲にはいくつかのスポットがある。客家語の有名な歌「客家本色」の作者である涂敏恒の旧宅、ほかにも伝統建築三合院の家屋や、近年設置された現代アートのインスタレーションを見て回ってもいい。陳履献などの開拓者たちが石を削って造り上げた幅60センチの灌漑用水路「穿龍圳」は、台湾でも数少ない保存状態のよい水路で、いにしえの開拓の苦労や知恵がしのばれる旧跡だ。
苗栗の大湖は農業の里であり、イチゴやナシの産地として知られる。近年は台湾原産のナシに接ぎ木して改良が盛んに行われている。例えば「宝島甘露梨」は人の顔ほどの大きさで、きめ細かな多汁の果肉を持つ。ちょうど中秋節の頃に収穫を迎えるので贈答品として人気があり、この小さな山村に豊かな実りをもたらしている。またお年寄りたちが農作の休憩時に口にする油柑も、自治体によって栽培が促進されている果物だ。
客家には「人が勤勉なら宝を生むが、人が怠惰なら草が生える」ということわざがある。老官路が修復された後も、「あの道を歩こうという人などいないでしょう」と言われたことがあり、彭宏源は心配している。歩く人が少なければ、古道は再び大自然に覆われ、姿を消してしまうかもしれない。それで彼はガイドをするかたわら、ボランティアで除草や道の補修も行い、愛する故郷に誠心誠意で客を迎えている。