注文生産、サービス第一
台湾の自転車産業は委託加工から出発し、常に廉価な大量生産品を主力としてきた。陳勝凱のCSKはこれとは異なり、レース用の高級車を専門とする。
自転車生産は細分化されており、陳勝凱はフレーム部分を設計製造し、クライアントの注文によりホイールやペダルなど他の部品で組み立てる。CSKブランドの原料とパーツはヨーロッパからの輸入で、少量の高級品、フレームのカット、鋳造、塗装まで、専門の技術者が手作りで製作する。
自転車選手だった彼はプロの特殊なニーズを心得ていて「CSKはプロ向けに受注生産する、手作り限定生産の高級自転車なので、一般の大量生産とは市場が異なります」と説明する。
プロ用のレース車は、レースによって要求が異なる。長距離のロードレースでは、道路状況や地形に対応するため、振動を吸収できるグラスファイバーでフレームを作る。これに対して、平坦な競技場内のスピードレースでは、衝撃の吸収は重要ではなく、車体のカット面と空気抵抗が問題になる。車体が滑らかに抵抗を逃がせれば、逆風の影響を受けない。モトクロスとなれば車体は軽く、しかも柔軟かつ強靭であることが求められる。
ユーザーの身長、体重、体形も車体に影響してくる。体重150キロの南アフリカ代表選手から注文を受けた時は、車体を高くし、重量に耐えられるデザインとした。「私の選手時代、台湾の自転車はあまり洗練されていませんでした。自分で作るようになって、当時の夢が叶ったということでしょう」と陳勝凱は言う。
さらに、CSKではパーソナライズされた塗装も行う。例えば、結婚記念プレゼントであれば、奥さんの名前を入れるし、大渓のイチゴ祭ではイチゴを、アジア的精神を重視すれば東方不敗などとペイントする。張勝凱のアイディアの賜物である。
CSKの高い性能と塗装サービスはホワイトハウスでも認められ、星条旗を描いたマウンテンバイク4台を発注し、アウトドアスポーツを楽しむブッシュ大統領の護衛官が使っている。
丁寧な手作業のため、工場のラインのような量産はできない。高級路線のため、フレームから溶接、修正、ペイントまで完璧を求め、年生産量は1000台足らずである。3万〜40万台湾ドルの価格は富裕層向けである。
CSK自転車の顧客層はプロ選手と企業経営者である。何十万台湾ドルもする自転車は誰もが買えるわけではない。しかし、経済力がある自転車マニアにとって、注文に応じた限定生産で、しかも好みに応じたペイントができる高級自転車は、大量生産が主流のこの時代に他人と違う魅力を有し、ユーザーの優越感をそそる。
2002年、自転車選手の林志勲は釜山で開かれたアジア大会でCSKの自転車に乗って優勝した。