再定義、再設計
「廃棄物の資源化は循環型経済の始まりに過ぎません」と循環台湾基金会の黄育徴董事長は言う。以前はReduce、Reuse、Recycle(削減、再利用、リサイクル)の3Rが求められたが、今はさらにRedefineとRedesign(再定義、再設計)の2Rが求められる。
循環型経済に関するさまざまなフォーラムに招かれる黄育徴は「エアコンが欲しいのか、冷たい風が欲しいのか?」と核心的な問いかけをする。ここに重要な思考の転換がある。従来のビジネスモデルでは、一定期間使用したら製品を買い替えることを前提としており、企業はそこから利益を得てきた。しかし、それでは古いものは次々と廃棄され、汚染が増えてしまう。
「私たちは冷風が欲しいのであって、エアコンを買い替え続ける必要はないのです」と黄育徴は従来の思い込みを指摘する。消費者は自分の「ニーズを再定義」し、企業はビジネスモデルと製品デザインを変えなければならない。買い替えを前提としたビジネスモデルから「消費者サービス」へと変えていく。製品の使用年限を延ばし、企業はメンテナンスで利益を出すようにすればゴミを大幅に減らすことができるのである。
このように「生涯の顧客に対してサービスを売る」という考え方に変えれば、廃棄物を減らし、ブランドへのニーズも高められる。暮らしの中で「ニーズを再定義」できる製品は非常に多い。例えば「髭剃りシェーバーは、使い終えたらどうリサイクルすればいいのでしょう」と王家祥は問いかける。さまざまな素材を使った製品は自然分解されにくく、そのまま捨てられてしまうことが多い。しかし、シェーバーに対する人々のニーズを考え直し、C2Cの循環思考を用いれば、新しいデザインのインスピレーションが生まれてくる。紙でシェーバーを作るというのはどうか。「紙で手を切ってしまった経験は誰にでもあると思います。それならば紙でシェーバーを作れば自然に返すことが可能になるでしょう」と黄育家は言う。こうして生活のさまざまなシーンを変えていける。
こうした循環型デザインは、夢物語のように聞こえるが、台湾にはすでに少なからぬ実績がある。循環台湾基金会が国内の66の事例を集めた『邁向循環台湾:循環経済実践案例』には、さまざまな部門が「システム思考」を通して廃棄物を原料とし、資源を循環させ、利用し続ける事例が挙げられている。
台湾はこの循環経済の分野でリーダーシップをとることができると黄育徴は考えている。産業の面で台湾は、従来の弱点が新たな優位性となると考えられるからだ。台湾は長年にわたって受託生産の実力を蓄積しており、この点はヨーロッパも及ばない。実際にヨーロッパの多くの国が、台湾の循環型経済モデルに学ぼうとしているのである。
「台湾は早晩、循環経済の道を歩むことになります」と黄育徴は言う。製造業の盛んな台湾だが、原料の大部分は輸入に頼っている。こうした状況で、デザインを中心とした循環型モデルへ変えていくことが将来の目標になるという。