淡いメランコリー
絵本の好きな台湾の読者なら、ショーン・タンの名前は聞いたことがあるだろう。和英出版社が3年前に『レッドツリー』を出版しており、中文の翻訳者は名翻訳家の余光中である。
『レッドツリー』の物語はシンプルだ。赤毛の女の子はその日、朝から気分が晴れず、何を見ても暗いままだ。部屋の中には枯れた黒い落ち葉が舞い落ち、ほとんど部屋を埋め尽くしそうだ。だが夜に彼女が部屋に戻ると、赤い小さな木の苗が床から生えており、その苗が女の子の夢と一緒に大きな赤い木に成長し、彼女の心もだんだん明るくなり、ついに笑顔を見せるというものだ。
主人公の女の子が落ち込んで、顔を曇らせている様子は、実に暗く陰鬱な雰囲気に満ちている。それは誰もが気分が暗い時に見る世界や考え方であり、立ち直るきっかけは自分で探すしかないことを表している。本には原文も掲載され、ショーン・タンの沈んだ絵と英語の原文、余光中の優雅で含蓄に富んだ訳文が見られる。
ショーン・タンによると、オーストラリアのある精神科医が30冊『レッドツリー』を購入し、うつ病の患者にプレゼントしたという話があるという。これは大人の読者の彼の作品に対する最も直接的な反応だ。うつ病患者は傷ついているが、彼の作品から命の力を掴み取り、灰色の砂漠からオアシスへと戻る。これは作者自身も不思議に思うことだ。
今回の台湾訪問に合わせて、台湾のミューズ出版は彼の3作品『なくしもの(The Lost Thing)』、『ビューアー(The Viewer)』、『ラビット』も一挙に翻訳出版した。このうち『なくしもの』は文も絵もショーン・タンの手になる作品である。物語は、男の子が海辺で、迷子になった不思議な生物を見つけることから始まる。男の子はそれが汚いのも気にせず、家族の反対にも関わらず連れ帰り、ポスターを貼って持ち主を探し、最後に名もない暗い路地にその安息の地を見つけるという話だ。ショーン・タンが創作した「何を指しているか不明な暗喩、答えのない問題、読者に残された空間」に満ちたこの本は、彼の作品の中で最も人気で、人口わずか2100万人のオーストラリアで3万部も売り、彼も文章への自信を取り戻した。
幼い読者は明るくかわいい本に慣れているが、ショーン・タンの作品は一般的な美しいだけの絵本とは違う独特なものがある。彼の作品には植民帝国主義、工業化、社会からの阻害、孤独などのテーマが描かれ、暗いタッチで大人たちが直面する憂鬱さと衝突を表している。だから「絵本は児童文学か」という本質的な問題が議論されることになるのだ。
オーストラリアの華人絵本作家ショーン・タンは、学生時代から創作を始めて数々の賞を取り、絵本作家の道を歩み始めた。おとなしく内向的に見える彼は、ブラックファンタジーで大人の世界の憂鬱や衝突を描く。