想像力が力になる
韓国の出版社が文化の使命を果すことに刺激され、王董事長は帰国後に遠流、国賓飯店、仲観建築士事務所などを集めて台湾文創公司を立ち上げた。
2007年末、遠流は台北ビール工場跡で敷地7000坪の華山創意文化パークの経営権15年を落札した。一冊の本、一つの風景、学校、舞台となりうる文化の天地で、想像力ある人が実力を発揮し、台湾の美的生活を育てるのがその青写真である。
また、韓国の出版社が文化立国を目指して、アメリカのソフト業界の制限を受けまいと、電子書籍のユートピアを作り上げた実例を目に、遠流の社員も民族の自決心を掻き立てられ、電子書籍のソフト開発を進めることにした。
「出版社は作家に奉仕するもので、その創作を保護し収入に出来ないなら、デジタル化も意味はありません」と話すが、そこで初めて作家は版権を引き渡す気になり、デジタル化最大の壁を乗り越えられる。
遠流のデジタルコンテンツ開発部はマルチメディアの『ネズミの嫁取』を対象に電子書籍の動的な見せ方を考え出した。僅か10数ページの絵本に最大の価値を発揮させるため、中英語や字体の切り替え、親に時間がない場合は、声を録音しておき自動的に読み聞かせ、子供たちがお話のリレーで語り、録音して聞く機能などがつけられた。
この電子書籍販売に向け、開発チームは版権の保護強化も考えた。ウィンドウズをインストールするときのように、電子書籍の起動に合法的な使用権の認証手続きを必要とするなどである。遠流博識ネットの会員ならオンラインで購入し、ダウンロードやプリントアウトができ、保護がかけられているので電子書籍のファイルが外に流れることはない。
「版権保護の鍵は技術ではなくサービスで、ユーザーに邪魔されているような不快感を与えてはなりません」と、このKoobeソフトを開発した技術者は話す。版権保護の管理システムは、入り口のソフトと組み合せれば不正アクセスを防げるが、完璧は難しい。セキュリティを施しても、それをかいくぐる人はいるもので、研究開発で知られるアップルのiPhonのソフトも防げない。問題は、その影響と速やかな修復である。
2008年11月、遠流はKoobeソフトを利用して傘下の雑誌「科学人」をデジタル化し、さらに科学人小事典で付加価値を高めネットの読者が科学の専門用語を調べやすくした。この付加価値があって、「科学人」電子版が始まって1ヶ月で、万を超える読者がお試し版をダウンロードしている。
またKoobeソフトでは、どの文章がどれほど多くの人にどれだけの時間読まれているかの読書分析が可能で、それで見ると電子版の読者の32%が付加価値機能を使っていて、平均の読書時間は35分39秒であった。
遠流がKoobeソフトを紹介する過程で、多くのハイテク会社の興味を引いた。世界に5万人余りの社員を擁するAUOは、このソフトで内部出版物(簡体字繁体字の中国語、英語版など)を発行し、紙メディアの出版量を大幅に減らせたのである。
このソフトで異業種を結ぶプラットフォームを構築しようと、2009年にKoobeは遠流出版から独立し、数名の研究開発チームから40人の遠通科技公司を立ち上げた。遠流の金庸機は遠通科技の最初のクライアントで、その後は「数位時代」「経理人雑誌」など雑誌31種がKoobeで電子版を発行する予定である。
遠流出版社はビューソニックと協同で「金庸機」を開発した。設計と販売ルートはビューソニックが担当し、ともに電子書籍の世界を開こうとしている。