アメリカのCNNに「世界一」と称えられるなど世界的評価の高い台湾の国民皆健康保険制度だが、予期せぬことに1995年のスタート直後は不満の声が多く、さまざまな物議をかもした。受付から診察、薬の受け取りと、すべてのやり方が変わったため、病院側からも患者側からも不満が出たのである。
だが歩み続けて20年、多くの人が健康保険の恩恵を受け、健保のおかげで健康を回復した感動的な話などが報道されるようになると、当初の疑問の声も、やがて「全民健康保険があってよかった」というものに変わっていった。
この全民健康保険がスタートした1995年、「最も美しい声を持つ華人」と称された大スター、テレサ・テンが持病の喘息の発作を起こし、タイのチェンマイで亡くなった。その知らせに多くのファンが心を痛め、その死を惜しんだ。
短い43年の人生でテレサ・テンは、「小城故事(小さな町の物語)」「我只在乎你(時の流れに身をまかせ)」「月亮代表我的心(永遠の月)」など多くの名曲を歌い、大ヒットさせた。当時の閉鎖的な社会的雰囲気の中で、どれほど多くの人の心を慰めたかは計り知れない。その歌声は国境を越えて日本やインドネシア、そして緊張関係にあった中国大陸にも上陸した。中国大陸では、あまりのヒットに当局が聞くのを禁じたため、「昼は老鄧(鄧小平)を聞き、夜は小鄧(テレサ・テン)を聞く」と言われたほどだった。
20年が過ぎ、佳人はこの世を去ったが、歌はなおも歌い継がれる。そしてテレサ・テンを失った台湾も、ソフト・パワーで国境を超えようと努力を続けている。
人々の不満や疑問の声の中で実施された全民健康保険だが、この制度は今では世界的にも高く評価されている。
人々の不満や疑問の声の中で実施された全民健康保険だが、この制度は今では世界的にも高く評価されている。