他とは違う彰化の爌肉飯
爌肉飯が彰化を代表する「市吃」になったのには、この地域の物産の豊かさも関係している。濁水渓の水を引き込む用水路の八堡圳が広大な平野の田畑を潤している。良い水は醤油の醸造にも向いており、百年以上の歴史を持つ醸造所も多数ある。彰化は畜産業も盛んで、養豚の頭数は全国で3番目に多い。さらに海の幸も捕れる。爌肉飯の材料を見ると、豚肉、醤油、ネギ、それに一部の店ではサトウキビやハマグリを加えてうま味を出している。一杯の爌肉飯に現地の海と山の幸が融合しているのである。
食材が良いため、味もシンプルなものが好まれ、彰化の爌肉飯は香料や漢方薬を加えない。「あくまで醤油がメインで、シンプルな塩味と香りを楽しみます」と語るのは、故郷の美食を考察した後に『彰化小食記』を著した陳淑華だ。
食感については、福建省から渡ってきた人々の子孫は歯ごたえがあるものを好み、それが彰化の爌肉飯の特色となっている。白米は粘り気が少なくさっぱりしているので、そこへ醤油味の煮汁をかけてもべたべたしない。
肉の部分は、彰化の店は一般的なバラ肉ではなく、腿肉を選ぶ。調理する時に切りやすいだけではない。彰化の爌肉飯は、東坡肉や客家の封肉が「口の中でとろける」のを追求するのとは違い、長時間煮込んでも皮は弾力があり、肉はしっかりと噛み応えがあるのが好まれるからだ。そこで脂肪分が少なく、筋肉がしっかりした腿肉が最良の選択となる。
だが、腿肉に味をしみ込ませ、しっとりと仕上げるには工夫が必要で、ずっと弱火で煮続けるわけにはいかない。店ごとに秘訣があるが、加熱と冷却を繰り返し、何回かに分けて火を入れる店が多い。また皮と肉が離れないように、皮と赤身肉に楊枝を指して固定させた特殊なスタイルが、彰化爌肉飯の特徴となっている。
彰化人は、ステーキを食べるのと同じように爌肉飯にこだわりを持っている。写真は店主がお客のために肉を選んでいるところ。