美しい花のパワー
花卉は美の産業であり、経済価値の高い農作物である。
花卉産業は、切り花、鉢物(培地は土)、ランの鉢物(培地は水苔)、球根、種子、苗木などに分けられる。単位面積当たりの生産高で見ると、台湾の花卉栽培面積は1万3109ヘクタールで農地面積全体の1.8%なのに対し、生産高は120億台湾ドルで、農業生産高の6.6%を占める。
しかも1995〜2008年の14年間、花卉の輸出額は10倍以上成長した。1997年のアジア金融危機で多くの産業が打撃を受けた時、台湾で成長を続けた産業は、自転車と花卉輸出だけだった。
2009年、行政院農業委員会は台湾を「世界花卉島」にするという目標を立てた。中でも期待されているのはランだ。台湾のラン栽培は産業化が始まって20年余りになり、単位面積当たりの生産高は花卉産業売上全体の23.3%を占める。2004年、ランはマンゴーや高山茶、ティラピア(イズミダイ)と並ぶ台湾の四大輸出農作物の一つとなった。農業委員会は「農業生産高倍増」を目指しており、2014年にはランの売上を現在の26.5億元から53億まで伸ばしたいと考えている。
近年の台湾花卉産業の急成長は産官学の積極的な取り組みによるところが大きい。
台湾大学、中興大学、嘉義大学などが、長年にわたって花卉育種研究に力を注いできた。農業委員会農業試験所の各農業改良場も、周辺の花卉産業の栽培や鮮度維持などの技術開発に協力してきた。
9年前、農業試験所は雲林県古坑に花卉研究センターを設立し、主要輸出花卉の研究を開始した。センター主任の謝廷芳によると、花卉センターは輸出実績に従ってコチョウラン、オンシジウム、シンビジウム、アンスリウム、トルコギキョウ、グラジオラスなど、主要輸出花卉を重点研究項目としている。
台湾の数々の花卉の中で、国際市場に進出できる種類が限られているのはなぜだろう。
一つは、コチョウラン以外の品種育成者権の多くが我が国の手にないこと、もう一つは防疫上の要因である。鉢物は土を除去し、根を剥き出しにした状態で輸出しなければならないが、この試練に耐えられる植物は非常に少ないのである。一方の切り花は、輸出過程で鮮度を保つことが大きな課題となる。
インドの詩人タゴールは「緑の葉が恋をして花になった」と言い、唐の詩人・李白は「雲に衣裳を想い 花に容を想う」と歌った。美しい色彩に満ちた花の世界は、ロマンチックな想像をかきたてる。下の写真はカランコエ・ブロスフェルディアナの台湾の新種「中興3号」。