精鋭が勢ぞろい
数年前に比べると、最近進出したレストランは、いずれも周到な準備をしてから乗り込んでいる。競争の激しい大陸市場では「人の他に、十分な資金と専門性も必要です。そうしなければ成功できない時代です」と話すのは王品グループの陳正輝さんだ。「私たちは台湾の33店舗で最も優秀な幹部を全て派遣し、一軍のオールスターで取り組んでいます」と言う。陳さん自身、家族全員を連れて上海に赴任しており、もう一年余り台湾に帰っていないそうだ。
台湾での年間売上は10億台湾ドルを超え、アメリカにも支店を持つ王品グループとしては、大陸進出は遅かったとも言えるが、陳正輝さんはこう説明する。「私たちは以前、現地のサラリーマンにアンケート調査を行ないましたが、その結果、かつて英仏の租界があった上海でさえ、夕食に西洋料理を選ぶ人がいなかったのです」上海人には、雰囲気を楽しみながら食事をするという習慣がまだなかったのだ。
それから4〜5年の観察を経て、一昨年、陳正輝さんは台湾のパンやコーヒーやフラワーティーなども進出してきたのを見て、機が熟したと判断した。そこで中年の中産階級にターゲットを絞り、王品台塑ステーキを売り出すことにした。
台湾とアメリカですでに百戦錬磨の王品グループだが、レストランの開設は工場設置とは違う。「これは複製の過程ではなく、全く新しい取り組みです」と語る陳正輝副董事長によると、まず問題となったのは原材料の取得である。
牛肉はアメリカンビーフで同じだが、肉の漬け汁を作るのに3ヶ月の時間を要した。「ここのキッコーマン醤油の味は台湾のとは違うのです」と陳正輝さんは言う。
鼎泰豊では小龍包の付け合せに出す針ショウガにふさわしい素材を求めて広東まで行ったが、台湾の新ショウガほどさっぱりして歯ごたえの良いものはなかった。
このように食材は地域によって大きく異なるが、広大な大陸の物産は豊富だ。台湾のようなショウガは見つからなくても、上海には最高のカニがある。「大陸で出している蟹粉小龍包には、上海ガニを使っています。上海ガニが旬のこの季節は蟹粉小龍包を食べない手はありませんよ」と話すのは、加盟店方式で上海鼎泰豊を経営している広成餐飲公司の区錦祥総経理だ。
中国最大の水産物市場である上海の銅川市場に行くと、福建の巻貝、汕頭のカニ、煙台のナマコやウニ、大連のマテガイなど、最高のものが揃っている。台南担仔麺の陳国源経理は、毎日ここに食材を見に行き、さらに浦東国際空港で台湾から送られてくるカラスミや日本のヤマイモ、マレーシアのエビ、香港からの生牡蠣や高級魚などを受け取る。
上海新天地に旗艦店を開いた「一茶一座」は大型セントラルキッチンを設置し、上海を世界進出の足がかりにしようとしている。