2. デジタルの躍獅と頑石
フランツは東西文化の融合で成功したが、新しいデジタルテクノロジーを操るクリエーターも活躍している。この5年、彼らは北京五輪や上海万博、そして大々的な企業誘致などにおいて、中国の古い文化を新しい姿で現代に蘇らせ、クリエイティブ産業に新たな扉を開いた。
2010年の上海万博では、宋代の都の生活を描いた「清明上河図」がマルチメディアで再現され、中国館の中でも最も注目された。万博閉幕後には台北と香港でも展示されて大きな話題となったが、これは台湾の躍獅影像公司(YAOX)が創り出したものだ。
コンピュータを利用して、本来の作品を30倍に拡大し、高さ6メートル、長さ110メートルのスクリーンに映し出す。描かれた千人以上の庶民が生き生きと動き始め、画面は郊外から次第に都市部へと移っていく。
CF製作からスタートした姚開陽・呉菊夫妻は、1994年にブランド創設の夢を抱いて躍獅影像を設立し、アニメ制作を開始した。しかし台湾の市場は小さすぎると感じ、10年前にテーマパーク用の3D影像の制作を開始、台湾の3D影像の草分けとなった。技術の進歩に連れて4Dへと進み、科学教育やSFの3D動画を数十作品制作して台湾、日本、韓国などの博物館でも高く評価された。
こうしてマルチメディア制作や設備面で蓄えた力がピークに達し、上海万博「中国館」のクリエイティブディレクターの座とマルチメディア制作を請け負い、「台湾館」の天燈のマルチメディアと720度のスクリーンの設計も担当することとなったのである。これを機に、躍獅は大陸各地の博物館やテーマパーク市場にも進出した。
一方、設立10数年で規模はやや小さい頑石創意もこの時期に大陸に進出した。5人からスタートした頑石は、伝統文化とデジタル技術の融合に長けており、台北故宮博物院201エリアの書画のマルチメディア影像を制作した経験もある。
頑石も展示デザインを積極的に手掛けており、今年9月の台北国際文化創意博覧会の「科技文化館」の企画も担当した。大型の「桃花源」と舞踊と光と音が織り成す幻想的な作品だ。
頑石創意の郭正雄董事長によると、5年前に彼らは大陸の博物館市場に着目し、北京の文化創意産業博覧会に出展した。そこで気付いたのは、周口店や北京円明園など大陸の多くの遺跡では見学者に見せるものがないことで、デジタル技術による遺跡再現を提案することにした。
頑石は円明園と4年にわたって話し合い、今年ようやくデジタル円明園計画が決定した。
彼らは清代の宮廷画や史料、西洋人の版画などから「円明園物語」シリーズの3Dアニメーションを制作し、望遠鏡を通して、焼かれる前の円明園の美しい庭園を見られるようにした。例えば、乾隆帝が香妃と水の舞いを鑑賞した「大水法」、香妃が礼拝した石造建築の「方外観」、乾隆帝が休んだ東屋の「五竹亭」などだ。
この他に頑石は学校の課外授業のための解説カリキュラムも作成した。現在すでにアニメ2本と庭園景観1ヶ所の再現を終え、来年の旧正月に公開する予定だ。アニメとデジタルコンテンツの版権は頑石の所有となり、将来は各地での展覧の権利金やサービスが利益となる。
成長著しい上海ではクリエイティブ産業も勢いづいている。写真は上海の製鉄所を改造した「紅坊」クリエイティブ産業エリア。