尽きることのない創意
7年前、潘子村は家族を養うために再び仕事に就いた。警備員や貴金属リサイクルなどの仕事をしたが、やはり行き詰まり、家族を連れて宜蘭の実家に帰った。世界の新思潮に敏感な彼は、この頃からメイカーズムーブメント(ものづくりの潮流)の中で人気となっているスチールタングドラムの存在を知る。
彼は家族から数千元を借りて基本的な金属の切断機とグラインダーを購入し、屋上で作業を始めた。ネットで資料を探し、廃棄されたプロパンガスのボンベの上部と底を切り取り、それを溶接してタングの切り込みを入れ、音を調整すると荒削りの原型が完成した。
「あらゆるインスピレーションが湧いてきました」と潘子村は言う。誰の指導を受けることもなく、手探りの作業だったが、心から手作りの喜びを感じた。スチールタングドラムは実用性と美感を具えており、素材の選択や外観、タングの配列、音階の選択などさまざまな要素がある。数えきれないほどの失敗とやり直しを経ることとなったが、創意を発揮する空間は大きい。
最初の頃に使った古いプロパンガスのボンベは表面が腐食していて、味わいある外観にはなるものの、耐久性は劣るものとなる。そこで「一生使えるものを」と考える潘子村は、真鍮や紅銅、青銅、SUS304ステンレスなどを試みた末、最高級の医療用ステンレスに行き着いた。
さらに、工場で量産される製品と差別化するために、ネットや原書で資料を探し、ヨーロッパの宮廷でも用いられるフォーフィニッシュという塗装を独学し、アクリルペイントを用いてさまざまな鉱石のような外観に仕上げることに成功した。「どの作品にも愛がこもっています」と言うとおり、思いのたけを込めて作っている。
束縛が嫌いで、そのために行き詰まったこともある潘子村は、この仕事でようやく身を立てることができた。現在はブランドの知名度も高まり、工場と契約して半製品を量産しているが、それでもハンドメイドのプロセスは欠かせない。制作に当たる時、彼はすべての雑念を棄てて集中し、「動態静心」という境地で作業に取り組む。「かつて就いた仕事で5ヶ月以上続いたことはありませんでしたが、スチールタングドラム作りはすでに7年になります」と言う。
金属加工と楽器工芸を融合させたスチールタングドラムの製造工程は複雑だ。細部にこだわる潘子村の性格もあって、販売されるすべての作品は数えきれないほどのプロセスを経て作られる。