Q:明基南京病院と蘇州病院が建設中ですが、なぜIT産業から医療産業に乗り出したのでしょう。
A:当社は中国に投資して4年になります。常に100人以上の台湾人幹部が駐在しており、医療への需要が大きいのです。大陸は10年で急速に発達しましたが、相対的に遅れているのは医療です。当社でも現地社員が入院して亡くなったことがあります。
中国の将来を展望すると、医療消費とGDP成長は正比例し、GDPが5%成長すれば医療支出は少なくても10%以上成長します。無限のビジネスチャンスと言えるでしょう。
Q:明基グループの李焜耀董事長は、大陸市場の戦略と医療産業の観察に基づいて、病院投資という形で社会にフィードバックしたいと語っています。この戦略的配置についてお教えいただけますか。
A:明基が中国に根を張って自社ブランドを確立してきたのは現地社会に溶け込むためです。台湾では、台湾プラスチックを知らない人でも長庚病院は知っています。長庚は一般市民の生活に密着した存在だからです。
明基南京病院は40アールの敷地を持ち、南京市はこの一帯を台北の信義計画区のような新都市エリアにしたいと考えています。明基病院はその代表となる基礎建設で、このエリアの建築物の広告は、すべて明基病院に近いことをアピールしています。南京の地下鉄の駅も明基病院という駅名で、これは明基の知名度向上と南京の発展の両方に役立ちます。
Q:明基グループの本拠地は蘇州ですが、なぜ最初の病院に南京を選ばれたのでしょう。
A:明基は長江デルタに根を張っています。我々は蘇州に工場を設けた最初の台湾企業で、その後、江蘇省の台湾企業のモデルとなりました。ですから、ブランドを江蘇省に根付かせるのが良いと考え、南京を選びました。南京は省都ですし、江蘇省で最も裕福な地域で、省は南京市の収入を全台に再分配しているのです。
人口構造も考慮しました。蘇州は若い移住者が多い都市ですが、南京は人口バランスが取れており、年齢の高い人ほど医療需要も高いものです。南京には48の大学や専科学校があり、人材も豊富です。さらに重要なのは、医療は政府の規制を受けますが、南京なら江蘇省のトップと連絡が取りやすいという点が挙げられます。
Q:中国では、医療費が高くて病院へ行けないと言いますが、莫大な建設資金をどう回収するのでしょう。
A:大陸では20年前の台湾と同様、健保のない人が7割に達します。外来診察1回が平均200人民元、入院なら1万元は必要で、台湾より高いのです。現在の中国は貧富の差が大きく、お金持ちは台湾より多いのですが、それでも質の高い医療サービスを受けられません。
北京の和睦家病院は婦人科専門で診察費は非常に高く、1回の出産に平均1万米ドルかかりますが、多くの人が診察に訪れます。この病院は最も裕福な層をターゲットとしており、こうした人々は質の高さを求めます。明基病院もそうで、ここで五つ星クラスの治療を受けるには、相応の費用がかかることを人々は知っています。明基病院の10数億人民元の投資はすぐには回収できませんが、自給自足していければ充分です。
Q:中国政府は、合弁病院の外資は7割まで、経営は20年までという制限を設けていますが、持続的経営に影響しませんか。
A:医療は一般の投資事業とは異なり、各国の法令による高度な規制を受けるものです。20年というのは長い歳月なので、その間に法令がどう変わるかは分りませんが、中国は前進し続けると信じています。もちろん我々もリスクを評価しました。現在の中国側パートナーは資金だけ出して経営にはタッチせず、董事会の議席も明基の方が多い状態です。
Q:台湾の医師は大陸では働けない決まりですが、両岸の医療チームはどのように協力するのでしょう。
A:来年の今頃から現地の医療スタッフを募集します。現在、台湾の医師は1年を期限とした営業許可しか得られないので「客員」のような形で来ていただき、彼らに現地の医師の訓練をお願いします。明基で働けば、台湾のトップクラスの医師に学べるのですから、これは現地の医師にとっては大きな誘因になるでしょう。