
台湾に旅行に来れば、自分の足で各地を訪ね歩き、地元食材を使った料理を楽しみ、たくさんの風景写真を撮ってインスタグラムやフェイスブックにアップする。そして台湾らしいお土産を買って帰り、旅の思い出を家族や友人と分かち合う。

故宮博物院のコレクションがお土産に変身し、旅の思い出に持ち帰ることができる。
故宮博物院の国宝を持ち帰る
お土産には自分のためのものと、家族や友人知人のためのものがあるが、最近の台湾の土産品は以前のものとはずいぶん違ってきた。台湾の多様な要素が加わり、日常生活に密着したものが増え、デザインにも工夫が凝らされている。台湾特有のユーモアが込められたものや、環境意識の高まりから地球にやさしいサスティナブルなお土産まである。今回は国立故宮博物院、未来市、台湾デザイン研究院の商品から、お土産のおもてなしを見てゆく。
海外から台湾を訪れる人の大部分が、世界トップの中華文物コレクションを有する国立故宮博物院を見学する。「故宮博物院の貴重な所蔵品は世界唯一のもので、その精選性と重要性は他にはないものです」と話すのは故宮博物院文化創意マーケティング処の王耀鋒・副処長だ。
故宮博物院では70万点近い所蔵品が専門的な計画に従って展示されており、入場者は世界で唯一の貴重な文物と出会うことができる。見学を終えて館内のショップに行くと、今度は数々のコレクションから生まれたクリエイティブな商品が並んでいる。さっき見た貴重な文物がお土産に変身し、手で触れることができる。
「故宮のおもてなしは、最も貴重なものをお見せすることです。そしてそれらのコレクションをクリエイティブな商品へと変身させ、お土産として持ち帰っていただくのも私たちの誠意の一部です」と出版科の呉怡青は言う。
故宮のお土産は大きな進歩を遂げている。「翠玉白菜」の関連グッズは、以前からショップで最もよく売れており、さまざまな商品が開発されている。文化創意マーケティング処の李威蒂科長は、翠玉白菜をイメージさせるデザインの傘を見せてくれた。これと組み合わせるのは赤・青・緑の台湾チックなナイロンの手提げで、ドリンクのカップがちょうど収まるサイズだ。
故宮博物院の収蔵品のほとんどは歴代皇帝のコレクションだが、お土産には親しみやすいものも少なくない。「氷梅紋多機能パスポートカバー」は清高宗の「御製詩初集」の表紙の布模様を採用し、しかも現代的なデザインになっている。台南の廣富號とのコラボでキャンバス地をミシン縫いした台湾製だ。古書の形式を採用して右から開く形になっていて、故宮博物院の教育面での役割も果たしている。
クラシカルなものばかりではない。周裕穎がデザインしたサングラスは、乾隆帝が王義之の「快雪時晴帖」を称えた「神」の一文字を眼鏡の柄の部分に入れ、レンズの表面にはその書を刻んだユニークなものだ。
もっと面白いものもある。故宮博物院は一般の人々がコレクションの画像をデザインに取り入れることを認めており、それに伴って作られた派生グッズのデザインコンクールを開催している。その受賞作品の「朕倦了/本宮乏了—熱狂後の良い眠りアイマスク」は、故宮所蔵の明代の皇帝・皇后の肖像画を用い、その目の部分をアイマスクにプリントした笑いを誘う商品である。また、「宋太祖坐像」からアイディアを取った「朝廷箸置き」は、皇帝像をキャラクター化し、宋代の官吏の帽子の両側の羽の部分を箸にしたものだ。皇帝の座面は醤油皿になっていて、食事をする使用者に皇帝が仕えてくれる。
故宮博物院は所蔵する国宝を、ファッショナブルな、あるいはユーモラスなお土産へと変身させて提供している。

未来市のデザインブランド
プレゼントをするのが大好きという「未来市」主席の汪麗琴は「生活の美」の推進を志している。以前「好様聚落VVG Lifestyle Village」を開いて注目され、2018年にはアジアのデザイナーを集めたデザイン・プラットフォームとして「未来市」を開設した。それから一年余り、多くの人が行き交うにぎやかなマーケットとなっている。
台北の華山文創園区にある「未来市」は真っ白な空間で、各ブースがそれぞれの創意の舞台となっている。世界各地から訪れた観光客が、展示された商品に驚きの声をあげている。
華山文創園区を訪れる人の7割は観光客なので、汪麗琴は外国人が台湾の文化に触れられるよう、台湾のデザインブランドを推薦している。
例えば、農業作品を出版する「掌生穀粒」は、農作物は食べるだけではなく、天地人が交流する大地の創作であり、農家は作家だと考えて農作物を扱っている。そのブースには節気をデザインした可愛らしい袋入りの米や、様々な農産品があり、台湾の風土や滋味を持ち帰りたくなる。
「伝統的過ぎるものは現代の生活には合わないので、デザインが必要です。デザインと工芸の融合も推進しています」と王麗琴は言う。そうした伝統工芸に現代的なデザインを融合させたものとして、汪麗琴は「greenroom」と「Züny」を推薦する。皮革を用いた商品は、暮らしにとけ込み、さらに癒しを与えてくれる。
汪麗琴はギフトについてこう語る。「私はプレゼントをするのが大好きなんですが、その理由の一つは『シェア』したいからです。シェアはとても大事なことで、人と人とのつながりの一部は自分が好きなものをシェアすることで相手に自分を知ってもらう点にあります。プレゼントは自分の趣味を伝えることでもあります」と言う。彼女が推薦するブランド「厝内TZULAï」は台湾語で「家の中」という意味で、家に対する台湾人の感情から日常的な家庭用品をデザインしている。例えば「筷籠(箸立て)」は伝統的な原形を残しつつ、現代的なデザイン要素も加わり、台湾人は親しみやすさを感じ、外国人も気に入る商品だ。このように台湾のデザインブランドのお土産選びも、旅の美しい風景となる。
未来市のデザインブランド
台湾デザイン研究院(前身は台湾創意デザインセンター)副院長の林鑫保は、これまで多くの国を旅し、多数の土産品をコレクションしてきた。彼にとって、お土産は旅の思い出であると同時に、人とシェアするもので、良いものを友と分かち合いたいという気持ちがこもると言う。
「小さなお土産も、私たちの人生の夢や価値観を反映することができます。それは、その人の生活の記憶であり、人生の価値の表現なのです」と林鑫保は言う。例えば、工芸品を一つ購入すれば、それは工芸品の製作者や職人の技術に対する評価や敬意を意味する。人を驚かせるようなアイディアの込められた品物であれば、そのアイディアに対する共感を反映している。
「お土産の多くは、その土地の文化や世界観、価値観を反映するものです」と林鑫保は言う。台湾の昔からのお土産の多くには祝福の意味が込められていた。それに対して最近は、デザイン思考を導入した暮らしに密着したお土産も多く、質感が高いため贈り物にも自分用にもふさわしい。例えば日月潭の美しい自然をデザインに取り入れた日月潭紅茶は思い出をよみがえらせる。また、最近海外で数々の賞を取っている「福湾チョコレート」はカカオ豆の栽培からチョコレート製造まですべて台湾で行なっており、さらに台湾のドライフルーツや茶などを加えたものだ。デザインやネーミングも工夫が凝らされ、「日月潭斜暉」「太麻里晨曦」「九份黄昏邂逅」「阿里山雲彩」など、チョコレートを味わいつつ台湾の美しい景色を思い起こさせる名前が付けられている。
デザインのほかに、地球にやさしいという点も見逃せない。台湾では環境意識が高まり、多くのデザイナーがサステナビリティの概念をデザインに取り入れている。例えばHMMと春池ガラスが協力して生産するリサイクルガラスを用いたグラスは、世界二位という台湾のガラスリサイクル率の高さを伝えるだけでなく、職人の技が込められていてさまざまなストーリーを表現している。DOTdesign x RenatoのコラボによるブランドRePlayがデザインする稲殻ビーチ玩具は、100%分解できる生物由来の素材を用いている。籾殻を粉状にし、型を使って成形したビーチ玩具は3年以内に完全に分解される。包装もシンプルで、ゼロ・ウェイストを目指すものだ。
「台湾式おもてなしの精神は人への優しさで、心から湧きあがるものです」と林鑫保は言う。人と環境への優しさがこもったデザインは、台湾旅行の最良の土産品と言えるだろう。

未来市には台湾の多数のブランドが集まっており、台湾の大地とのつながりが感じられる。

未来市主席の汪麗琴。

未来市には台湾の多数のブランドが集まっており、台湾の大地とのつながりが感じられる。

未来市には台湾の多数のブランドが集まっており、台湾の大地とのつながりが感じられる。

未来市には台湾の多数のブランドが集まっており、台湾の大地とのつながりが感じられる。

台湾では環境意識が高まり、多くのデザインがエコ・フレンドリーの概念を取り入れている。

台湾では環境意識が高まり、多くのデザインがエコ・フレンドリーの概念を取り入れている。


故宮博物院 「闘彩鶏缸杯」レプリカ / 故宮の重要なコレクションの一つ「闘彩鶏缸杯」。色鮮やかな鶏が生き生きと描かれている。

TZULAï 箸立て / 伝統の原型に現代的なデザイン。

HMM 春池Wグラスプロジェクト特別合作品 / リサイクルガラスを用い、循環経済とエコ・フレンドリーを実現したカップ。

TZULAï 大皿シリーズ―エビの皿 / 浅いプレートに台湾式の料理が描かれ、宴会の豪華さとにぎやかさを伝える。

故宮博物院 豆茶器 / 中国古代の「豆」という食器をアレンジしたポットとカップ2つのセット。

掌声穀粒 【春知華其一植】 2020年春節ギフトセット / 台湾の味を思い出させる質の 高い食品をお土産に。

原味チーズ ストリップス / 西洋のチーズをさきイカのようにアレンジしたおつまみ。

福湾チョコレート / 屏東県でカカオから手掛けたチョコレートは台湾の味

日月潭紅茶 粋白ティーバッグセット / 台湾の大自然の美をあしらった美しいギフトセット。

故宮博物院 快雪時晴帖サングラス / 目には「快雪時晴帖」、口は「神!」。

greenroom 手作り革製カップホルダー / これを下げて出かけるだけでファッショナブル。

故宮博物院 氷梅紋多機能パスポートカバー / 古書の表紙を用いながら現代的なデザイン。

阿花晩熟石鹸 聖経シリーズ(森林) / 祖母の精神を受け継ぐ、生活の質を重んじた石鹸。

故宮博物院 「翠玉白菜」傘 / 国宝を模した傘と台湾チックな買い物袋。

RePlay 稲殻ビーチ玩具セット / 完全に生物分解され、環境に負荷をかけない。

故宮博物院 文物トランプ / 青銅器や汝窯の青磁、青花瓶、彩磁などの文物をあしらったトランプ。

故宮博物院 朝廷箸置き―宋太祖 / 宋の太祖が食事に仕えてくれる。

Züny ライオン動物ブックエンド / 可愛らしい動物が癒してくれるお土産。

故宮博物院 朕倦了/本宮乏了 熱狂後の良い眠りアイマスク

故宮博物院 朕倦了/本宮乏了 熱狂後の良い眠りアイマスク

故宮博物院 マスキングテープ 「朕知道了」