地面に近づいて知る世界
台湾の野草を知るのに、山深く分け入る必要はない。外国人もよく訪れる象山駅を出たところにある象山公園に行けばいい。台北信義コミュニティ大学の「野草の達人」、李嘉梅が公園の中を案内して100種近い植物名を教えてくれた。
「野草の世界を知るには、謙虚に腰をかがめて観察しなくてはいけません。高い所から見るのではどの草も同じように見えますから」という李嘉梅の最初の説明に従い、我々はしゃがんで地面に近づく。すると李は指差して尋ねた。「ここには何種類の草があるように見えますか」どれも緑一色の同じ草に見えるが、李嘉梅は次々と草の名を挙げていく。オニタビラコ、タカサゴソウ、ヤブヘビイチゴ、チドメグサ、イガトキンソウ、オオバコ、エダウチチヂミザサ、ツボクサ、カタバミ、ベニバナボロギクと。次第に我々にも、それぞれの姿がフォーカスされた写真のように浮かび上がり、異なる特徴が見え始めた。
李嘉梅が一つ一つ説明してくれる。モミジチドメは昔は薬草として重宝され、幼児の黄疸に効き、利尿効果もある。イガトキンソウは葉がニンジンに似ており、パセリのようにサラダにも使える。紫の小さな花をつけるのはムラサキムカシヨモギで、専ら風邪の治療に使われる。よく見かけるオオキバナカタバミは、酸っぱい味がするので「黄花酢醤草」「塩酸草」などと呼ばれ、消炎効果があり、睡眠の質も改善する。ツボクサが「雷公根」の別名を持つのは、雷雨のたびに節から根を長く伸ばすからだ。ベニバナボロギクは「飢荒(飢饉)草」という名を持つほど、野草として食されてきた。タネツケバナは細長い豆さやを持ち、食べても美味しい。
立春の頃は、オニタビラコが最も柔らかい時期で、李嘉梅はインスタントラーメンに入れると美味しいと言う。オニタビラコと同様に黄色い花を咲かせるのがタカサゴソウだ。どちらもキク科の植物なのでよく似ている。見分けるには、オニタビラコはいわゆる「根生葉」なので、葉が根元の土から生えているように見えるが、タカサゴソウの葉は茎から伸びる。ただ、よく見なければ見分けはつきにくい。
地面ばかりを見ていてはいけない。台湾の野草は木々も含む。李嘉梅は上を見るよう促し、シマサルスベリを指した。その名の通り、滑らかな樹皮をしているが、触ると硬い木質が感じられる。昔の人は骨や筋肉の強化のために煎じたそうだ。3階ほどの高さに伸びたリュウガンについては、「南は桂圓、北は人参と言われますが、桂圓とはリュウガンのことで、根や茎を煎じれば血を補うことはよく知られています」と説明してくれた。
目だけでなく、手で茎や葉にふれてその質感を知る。また葉をちぎったりもんだりして、その匂いをかいでみるのもいい。李嘉梅は「よく知れば、見えるようになります」と言った。