多様な台湾ドラマを
世界のドラマの多様性と比べ、台湾ドラマの多くは家庭倫理を扱ったものやトレンディドラマに限られていた。番組の題材が多様化しないと、人々の思考範囲も限られてしまう。商業ベースの他局は、さまざまな足かせで新たな試みに踏み出すのは難しいが、公共テレビならそうした足かせはなく、多くの可能性にチャレンジできる。
例えば、2019年2月に放送予定の『魂囚西門』は、PTS初のサイコスリラーだ。台湾の作家、九色夫の同名小説を原作に、歌手の蕭敬騰が幽霊専門の心理療法士を演じる。二重人格なのかヤクザの霊に取りつかれたのかはっきりしない美女や、 30年後に死ぬと鏡に告げられた女子高校生といった患者が登場し、治療の過程で人の心理が深く掘り下げられていく。そして治療を通し、すさんでいた主人公の心も徐々にほぐされ、自信を取り戻す。九色夫の原作には「心の魔を除くことが導きであり、人を導くためにはまず己を導かねばならない」とある。
ほかにも放送予定の『我們與悪的距離(我々と悪との距離)』は、無差別殺人を発端に、加害者と被害者家族の心模様を描きながら、メディアや人権問題への再考も促す。PTSが2019年度に放送する優れた作品の一つだ。
人材育成では、PTSは20数年にわたる長寿番組「人生劇展」で、多くの若手演出家に初の長編ド ラマ制作の機会を与えてきたが、写実的なドラマが主流だった。そこで2017年から、新たな試みとしてシリーズ「新創電影」をスタートさせ、ホラー、スリラー、刑事もの、SF、コメディなど多様なジャンルにわたる案を創作者たちから募集した。
募集開始から多くの創意あふれた企画が寄せられた。例えばSFドラマ『無界限』は、全人類が突然意識を失い、49秒後に意識を取り戻すと幽霊の存在が見えるようになっていたという2020年の世界を描いている。
『完美正義』は、台湾では数少ない刑事もので、魅力あるシーンにするために、銃撃戦の場面や弾丸が飛ぶ特撮などが準備された。また、ホラー作品で特殊メイクを施すなど、それらの経験の積み重ねが、映像産業の向上や育成にもつな がっている。
映画の規格でテレビ番組を作るPTSは、劇場とも協力して映画祭を催す。それらをテレビで流すほか、海外の映画祭にも出品し、好成績を上げてきた。例えば、モントリオール世界映画祭では『濁流』が、釜山国際映画祭では『最後的詩句』がそれぞれノミネートされている。ドラマの質を高めれば、国内の視聴者を育てることにもなり、それによって映像産業の発展も促進されるという好循環が生まれる。ネットの動画 サイトが盛んな現代、視聴者はとっくに国境を超えており、作品を世界で見てもらうには、ドラマの質を高め続ける努力をするしかない。PTSの実践によって台湾ドラマに多くの可能性がもたらさ れ、台湾文化と映像産業の実力を世界に示せることを期待したい。

さまざまな題材を受け入れ、どんなジャンルのドラマも恐れずにチャレンジして質の高い台湾ドラマを制作すること——公共テレビ番組部の於蓓華は、それが公共放送の当然の責任だと考えている。(荘坤儒撮影)

“ADHDは必須”。製作スタッフはロケの細部にもこだわった。回ごとに異なる色彩のトーンが設定され、独特の雰囲気がかもし出される。

欧米のように高額の製作費はなくても国際レベルの優れたドラマが制作できる。台湾の映像産業のソフトパワーを侮ることはできない。

公共テレビはシリーズ番組「新創電影」を打ち出して作品を劇場で上映し、台湾ドラマのさまざまな可能性を探っている。

公共テレビはシリーズ番組「新創電影」を打ち出して作品を劇場で上映し、台湾ドラマのさまざまな可能性を探っている。

公共テレビはシリーズ番組「新創電影」を打ち出して作品を劇場で上映し、台湾ドラマのさまざまな可能性を探っている。

公共テレビは映像制作者にさまざまな創作の場を提供している。刑事ものやホラー、スリラーなど、数々の経験を積むことでより大きな世界が広がる。