年中無休で借金を返す
娘が20歳になった時、彼女は正式に離婚して夫の家を出た。一文無しになった彼女は娘と新しい人生を歩み出した。
人生の谷底にあっても、彼女は店を持つ夢を持ち続けていた。前夫の関係で銀行の信用を失っていたため、融資を受けることができず、危険を覚悟でヤミ金融から60万元を借り、家賃5万元で古い店舗を借りた。
2002年、その古い店舗を改装して店を開いた。商売上手な彼女は、開店初日に麺を1杯10元で売って道行く人々を引き付け、閉店後には3ヶ月先に支払う10万元の小切手を切って慈善団体に寄付をした。自分を励ますための行為だったが、この行動が好評を呼び、マスコミにも報道されて、無料で宣伝できた。
店は観光客の行き交う好立地にあって繁盛した。3ヶ月後、彼女は小切手の支払いを終え、ヤミ金融からの借金も返済した。
商売繁盛の理由は、担仔麺にかける肉そぼろのおいしさだ。曾さんは、必ず当日しめた新鮮な豚肉を使い、ミンチにした後、油で揚げたネギやニンニク、干し貝柱、氷砂糖、醤油などでじっくり煮る。火加減と時間は機械でコントロールして味と品質を保つ。麺のスープは、エビ、貝柱、豚骨を煮出したもので、アヒルの煮卵を載せる。麺のほかに十数種類の小皿料理があり、お茶と漬物とスープは無料でおかわりができる。
同じ通りの老舗と差別化し、また「担仔麺は屋台の食べ物」というイメージを払拭するために、資金を投じて快適でレトロな空間を作った。これは、デザインに興味のある娘のアイディアだ。
次々とオープンする新店舗の空間デザインはすべて娘が考え、それを職人に伝えて施工する。プロのデザイナーには依頼していないが、出来栄えは上々だ。
娘の陳怡倫さんは、4年前に文化大学観光学科に合格したが、彼女は観光には興味がなく、当時は5万元の学費の負担も大きかったので1学期で休学し、母の仕事を手伝い始めた。成人した彼女は700万の銀行ローンがあり、今は高雄支店の責任者でもある。
一般に女性経営者の野心は大きくないと言われるが、曾さんはそうではない。現状に甘んじない彼女は、年に一店舗のスピードで事業を拡張してきた。これには娘も反対しているが、曾さんは、規模が大きくなれば食材の仕入原価も下がり、経営がより軌道に乗ると考えている。