民族を越えて広がるマオリ語
テ・ワナンガ・オ・アオテアロアは1984年に設立されたが、設立当初は正規の教育体制から外れたマオリの中退生に教育の場を提供していた。
それが1993年に正式に大学と認められ、学位と修了証明を授けるようになった。現在、全国に拠点150ヶ所、教職員1300人余りを擁する。募集対象はマオリに限らず、毎年3万6000人余りの学生が入学し、マオリ語やIT技術、企業経営、ソーシャル・ワークなどを学ぶ。
テ・ワナンガ・オ・アオテアロアではマオリ語が重要課程で、出身民族を問わず誰でも履修できる。「マオリでなくともマオリ語を学べます」と、マオリ語を教えて7年のTumatawhero Tihiは言う。ここには彼を含めて13人のマオリ語教師がいるが、すべてマオリ語を母語とするマオリ出身である。
マオリ語課程はバイリンガル・コースと集中コースがあり、バイリンガルは初級者やまだ流暢とは言えない学生向けで、一定レベルに達したら、すべてマオリ語の集中コースに切り替える。
Tihiによると、これは言語に特化した教育課程であり、文化の伝承については、織物や彫刻などの課程があり、また集落を訪問する実地体験コースもあるという。
文化は民族精神の中核
マオリ語のマラエとは集落の集会所を意味し、ニュージーランド全体で750近く存在し、マオリの重要なイベントがここで行われる。テ・ワナンガ・オ・アオテアロアでは、毎年少なくとも1回はオークランド郊外のオラケイ・マラエに出かけて、長老から伝統文化を学ぶ。
マオリは言語と文化の復権を求めるとともに、最近ではマオリが昔から親しんだ自然回帰を提唱するようになった。オラケイ・マラエにおいては、コ・テ・プカキと名付けた自然復活計画が実施されている。この計画を主導するCharmaine Wiapoによると、マオリがハラケケと呼ぶ伝統的作物で、ニュージーランド固有の亜麻植物を来年に1万2000本を栽培する予定で、これによりマオリの自然の多様性を取り戻すという。
テ・ワナンガ・オ・アオテアロアの広報担当者によると、伝統的作物を取り戻し、伝統食を復活させる必要があるという。欧米風の食習慣を百年余り続けた結果、マオリ人の糖尿病や心疾患が増加しているからである。言語、文化から生活習慣まで、マオリはかつての伝統の復活を試みている。これをマオリ語で言うと、カウパパ・マオリの実践である。
ニュージーランド国立ワイカト大学に留学していた台湾のパイワン族のズズルは、カウパパ・マオリというのはマオリを中心とした宇宙観で哲学なのだと説明する。
台中市原住民委員会に勤務するズズルは、台湾原住民教育にこれを置き換えて、精神的にも実行の面でも、台湾原住民教育には内なる民族意識と自覚を欠いていると考える。
台湾の原住民族は14部族から16部族に増加し、2年前から集落学校を設置し、原住民としての教育復権を試みている。
台湾原住民16部族の部族教育
「原住民の教育を原住民の手に返す」と、行政院原住民族委員会教育文化処の陳坤昇は、2012年から始まった集落学校推進の目的を語る。
簡単に言うと、政府が予算を組み、集落の長老を先生として、若い世代に民族の伝統文化を伝承するということである。集落学校は夏冬の休みに開設しており、二期制の通常学期に対して第三学期と呼ばれていて、学制内の通常学期の授業には影響しない。
集落学校を実施して2年が経過した現在、花蓮のアミ、屏東のパイワン、宜蘭のタイヤルと台東のプユマとブヌンでそれぞれ学校が開設された。これから10年以内に16部族すべてにおいて、それぞれ少なくとも1カ所の学校を開設するのが目標である。
集落学校は原住民の民族教育の基地として、教育課程には伝統信仰と祭儀、集落の歴史、集落の倫理と禁忌、言語と文学、集落の社会組織、伝統的生活技術、伝統芸術と音楽舞踊及び自然環境保護の八大ジャンルを網羅する必要がある。
募集対象は12歳から17歳の集落の子供を主とする。12歳を開始年齢とするのは、多くの原住民族の伝統文化に符合すると、陳坤昇は説明する。この年頃の少年は、まさに少年会所に参加して学習する時期で、ここから正式に集落社会組織の一員となるからである。
屏東のパイワン大武山集落学校を例に説明すると、この2年で71人の生徒が入学した。それぞれ平和、万安、泰武、佳平、武潭等の8集落の出身で、アワ、狩猟、タロイモ、漁撈、織物、婚礼などをテーマに、パイワン族の長老から伝統的な習俗を学ぶ。
集落学校のカリキュラム設計から実施までを通じて、集落学校はそれぞれに段階的に各課程の教材や授業計画を蓄積してきた。これについて、原住民族委員会は早ければ今年の夏休みから、蓄積し系統的に整理された原住民文化の教育に関する資料を、通常の教育制度内にある学校の課程に応用していく考えである。
教育部が認定した原住民重点学校は、現在台湾全土に約300校あり、これらの学校の生徒の3分の1以上は原住民出身である。原住民教育法の規定によると、これらの生徒に対して、学校側は原住民の民族教育を行う必要があるが、政府は予算の関係から台湾全土に広く集落学校を開設することはできない。そこで、原住民重点学校としては集落学校の教材と授業計画を導入し、夏冬の休みにコースを開設することで、より多くの原住民生徒に伝統文化と儀式を学んでもらうことにしているという。
陳坤昇によると、台湾原住民族の16部族には42種の方言が確認されていて、部族間の文化的差異は極めて大きいという。「それでもできる限り、既存の民族文化と言語を保存することで、文化の多様性を実現できるのです」と語る。
この多様性のため、ニュージーランドと比べても、台湾での原住民の文化と言語の復権は難しくなり、だからこそ一層努力し、速やかに実施していかなければならないと陳坤昇は言う。