東部唯一のメディア教育学校
この北成小学校は台湾東部で唯一の「メディアリテラシーセンター」として長年にわたって宜蘭県のサポートを受けてきた。校内には小さなスタジオがあり、さまざまな活動が行なわれている。中高学年の生徒はメディア関連のクラブ活動に自由に参加し、学校新聞を編集したり、取材を体験したり、ニュースを放送したり、学校外での映像撮影に取り組んだりしている。
専門能力を持つ熱心な先生たちによって、この小さなスタジオは「北成テレビ局」となり、器材の操作などを教えているが、より重要なのは、作品を制作する過程で、自分の考えを論理的にまとめ、表現することが学べる点である。先生たちも授業の合間に教員としての訓練を受ける。
映像撮影を愛する李易倫先生は、2010年から、高学年でのマルチメディア学習をさらに普及させようと考え、学級担任の先生方と協力し、週に3回の総合学習の時間を利用して多様な映像制作を教えてきた。外部からジャーナリストや講師も招き、子供たちを連れて各地を訪ね、実際の取材も体験させてきた。
授業でさまざまなドキュメンタリー作品を鑑賞する中で、地元のカメラマン林明仁さんが20年にわたって撮り続けてきた空撮写真に触れて、生徒たちは故郷の変化を目の当たりにした。
すると、多くの子供たちが「農舎」の増加に疑問を持ち始めたので、李易倫先生は生徒たちを連れて農業教育の座談会に参加した。座談会では宜蘭の農地保存に力を注ぐ二人の青年——「守護宜蘭心価値工作坊」の方子維さんと「田董米」の林哲安さんが、自分たちの活動を語り、子供たちの興味はますます高まった。
「この二人のお兄さんは、どちらも小規模農家で、その話に子供たちは衝撃を受けました。さらに昨年『農舎法』がメディアで大きく取り上げられたこともあり、私は生徒たちに家で両親とこの問題について話し合ってもらい、レポートを書かせることにしました。すると生徒たちが土地の問題に強い関心を寄せていることがわかったのです」と、自らも宜蘭で生まれ育った李易倫先生は言う。
そこで彼は、郷里の農舎と農地の問題について考えさせるドキュメンタリーフィルム制作プランを立てたところ、6年9組の5人の生徒が意欲を示し、チームが結成された。
撮影のテーマや表現方法については当初は具体的なことは何も決まっておらず、すべてはゼロからスタートした。
子供たちがカメラを通して故郷を記録する。異なる立場のさまざまな声に耳を傾け、宜蘭の価値を守るために力を注いだ。