理論と技術
教育部は、研究型大学の国際的知名度を高めると同時に、一部の大学に対しては教育型大学への方向転換を奨励している。
研究成果と教育の質を比較すると、前者は論文数や取得特許件数などでデータ化して評価できるが、後者の評価は難しい。
昨年から推進されている「教育卓越計画」では、各学校が教育部に対して、教育改善プランや必要予算を提出し、審査に合格した学校には予算の9割が補助される。昨年は13の大学に10億元が提供され、今年は予算を50億に増やして3年間で合計150億が全体の3〜4割の大学に提供される見込みだ。これによって、教育の質を向上させたい考えだ。
台湾には昔から「万般は皆下品にして、ただ読書のみ高し」という価値観がある。この価値観においては、研究型も教育型も認められるが、第三の「専門型大学」は困難に直面する。
教育部は、本来の師範体系(師範学院など)と技術職業体系(科技大学や芸術大学など)の学校を専門型大学に位置づけようと考えているが、現在のところ十分なコンセンサスは得られていない。
また、技術職業体系の大学では、教員やカリキュラムの位置づけについても、多くの問題が生じている。
まず、各種専門技術分野において博士号を持つ教授が不足しているという点である。教育部の定める「学科主任は博士でなければならない」という規定をクリアするために、違う専門分野の主任を招聘しなければならないことも多く、門外漢が学科の指揮を執ることで問題も発生している。現実問題に対応するための便宜的手段が、学科の自主性の喪失をもたらし、カリキュラムも雑多なものとなり、理論と技術を両立できない。これでは学生の質を高めることも、市場の要求に応えることも難しい。
「我が国の技術職業教育をどこへ向かわせるかは、難しい問題です」と話すのは台湾大学教員養成センターの王秀槐;副教授だ。以前は、高等職業高校を出た学生はすぐに就職できたが、現在は彼らを大学に4年間通わせなければならない。大学の理論中心の授業は、こうした学生にふさわしいとは限らないし、また博士号を持つ教授が、技術的な実践面の指導に長けているかどうかも疑問である。「真剣に学生と向き合っているのに、学生が授業に興味を持たないというのは辛いことです。こうした学生が4年間大学に通う必要があるのか、教員と学生の双方の貴重な時間を無駄にしているのではないでしょうか」と王副教授は疑問を投げかける。
ランディス台北ホテルの厳長寿総裁も「優秀なコックが包丁を手放して食材の成分を研究したり、論文を書いたりするというのは、適性に反する」と語っている。こうした奇妙な現象が至るところで起きているのである。
引き際の準備
高等教育の資源が限られ、大学の分業化が求められる中、少子化も年々進み、いずれは経営が立ち行かなくなる大学が出てくると思われる。大学が廃校になるということはあるのだろうか。
「当然あり得ます」と陳徳華司長は言う。昨年「大学法」と「私立学校法」が改正された際、教育部はこうした面での制度確立に知恵を絞った。例えば、大学の統廃合や、高齢化社会に向けた公共施設への転換の奨励などだ。
近年の高等教育の発展を見ると、今後も長い模索が続くと予想される。設備は短期間で整備できるが、大学としての完全な環境や学風を作り出すには長い年月がかかるものだからである。大学の普及は、もう一つのスタートと言えるのかもしれない。