事は人がなす
奨学金プラットフォームの構想は、アイディアから完成まで30年の縁の積み重ねだった。物語は中国文化大学社会企業管理学大学院修士課程の王振軒教授から始まる。
現在は大学院の所長も務める王振軒は、台湾公益組織教育基金会の創設者で董事長でもある。南投県埔里で育った彼は、子供のころから奨学金を受けてきた。中学の時は成績は普通だったが、ロータリークラブの奨学金を受け、米国の大学院への公費留学も実現した。
1991年、王振軒は多くの留学生と同様、授業の合間にアルバイトをした。幸い、レストランのウェーターや図書館ではなく、大学の財務部での仕事に就くことができた。
自由主義のアメリカでは、子供が高校を卒業すると、成人したものと見なし、6割の学生は高い学費と生活費を自分で賄わなければならない。アメリカの大学では、こうした学生のニーズに応える支援を行なっている。大学財務部での王振軒の仕事は、そうした学生の条件や背景によって、ファイリングされた奨学金資料の中からふさわしいものを探して提供するというものだった。
その後、大学教員になってからの教育の重点を「利他」に置き、個人の名義で基金会を創設して公益教育に力を注ぎ、また学生たちのために奨学金プラットフォームを構築したいと考えてきた。しかし、長年にわたって行動に移すきっかけがなく、大学を移ったり公務機関に勤務するなどし、5年前に大病を患ったことがきっかけで、ようやく決意したのだという。
冠動脈バイパス手術を受けて命拾いした王振軒は「考え方が以前とはまったく変わりました」と言い、早くやらなければと考えた。
プラットフォームには1万件近い奨学金情報が集まっており、条件を入力することで精確に検索することができる。