違法建築の放任?
しかし、監察委員の林鋸鋃;と洪徳旋が今年4月に行政院に対して矯正を求めたところによると、南投県は2001年の彭百顕知事の時代に、すでに監察院の調査に対して「現在、廬山温泉地区第二次都市計画の全面的な検討を行なっており、違法旅館と違法建築の問題を解決中」と書面を提出している。ここからも、これが与野党双方に共通する問題で、7年間何も進展していなかったことがわかる。
上述の監察院からの矯正要求には水利署第四河川局の調査結果が引用されている。それによると、廬山地区で河川区域を違法占拠している建築物は11棟あり、そのうち馬海僕渓の違法建築はすでに流され、綺麗飯店と公主小妹レジャー村の2軒は南投県によって昨年(2008年)10月に撤去されたが、残りの8棟はまだ撤去されていない。これについて水利署は「これらの建築物において河川区域を占拠しているのは建築物の一部分に過ぎず、これを撤去すれば建築物全体の構造の安全性に影響が出るおそれがあるため、期限を定めて経営者自身による撤去を求めるほかない」としているのだ。
先頃、マスメディアが再び違法建築問題を扱ったところ、南投県の陳志清副知事は「河川地を占拠し、河川の安全性への影響に緊急性がある建物は、すでにすべて撤去を終えた」と声明した。近年南投県の違法建築撤去予算は48万元しかなく、議会に提出した「違法建築撤去費用徴収自治条例草案」は却下され、「違法建築の調査から撤去までは時間も費用もかかるが、これは廬山だけでなく、全国に共通する問題だ」と述べた。
一方、違法建築と批判される現地の旅館業者にも言い分はある。廬山温泉観光協会の陳裕豊理事長によると、かつて塔羅湾渓は水利機関に登録も管理もされておらず、川床の水位は非常に低かったため、旅館を建てた当初は「河川区域占拠」といった問題自体が存在しなかった。ところが台湾大地震が発生して以来、塔羅湾渓の川床には毎年2メートルという勢いで土砂が堆積し始め、しだいに問題が浮上してきた。「さらに問題なのは、川下で台湾電力が万大ダムの浚渫を行なわなかったため、土砂が上流に堆積され、廬山温泉の被害が拡大したことです」と言う。
現在、万大ダムに堆積する土砂の量は8000万立方メートルに達するが、台湾電力は年間10万立方メートルを浚渫するとしており、まったく焼け石に水である。また、地勢が険しく交通も不便なため、従来の浚渫方法は通用しない。ダムの下流に向けて土砂を流せば川下の住民から反対の声が上がる。
廬山観光協会の理事長であり「碧緑飯店」を経営して32年になる陳裕豊は、現在の廬山温泉の知名度は、地元の観光業者の努力によって築かれたものだと言う。「ここの大型旅館は、台湾の北部、中部、南部のそれぞれに拠点を置いて営業してきました。一軒当たりの業績は県の観光処に匹敵します」と言う。それが今では罰せられ、被災した者が損をするという状態だと嘆く。
陳裕豊によると今年初、県は監察院の矯正要求の圧力にさらされ、自力で再建を果たして経営を再開していた旅館21軒に対し、今までで初めて「発展観光条例」および「旅館業管理規則」違反ということで約35万元の罰金を科した。「これでは傷口に塩を塗るようなものです」と陳裕豊は納得できないという口調で話す。旅館経営者は集団で罰金納付を拒み、不当な行政処分として訴願中だ。
台湾各地の温泉では、脆い土地に高さや豪華さを競うようにして次々と旅館が建てられ、過度の開発によって環境負荷が高まり、次々と襲う台風の災害にさらされている。しかし温泉業者は自分たちのビジネスの再建ばかりに取り組み(右の写真:碧緑大飯店提供)、傷を負った屋外の大自然には目を向けようとしない。