学生アルバイトも高待遇
現在、王品の正社員は4500人、時給アルバイトは3500人。アルバイトの比率は同業者よりやや高い(一部は学校の実習)が、離職率は正社員で2%、アルバイトで4%と業界でも群を抜いて低い。
不思議に思われるかもしれないが、王品では昨年末、時給アルバイトにもボーナスを出した。正社員のボーナス総額の10分の1で、働いた時間数に従って計算した。
これは戴勝益がかつて約束したことだ。翌年の会社の1株当りの純利益が10元に達したら、剰余金を従業員の福利厚生に用いると約束したのである。年末ボーナスは激励の効果を持ち、株主の権益も損ねず、会社が前途有望であることを意味している。
多くの会社では時給アルバイトを臨時の人手と考え、すぐに辞めていくのだからと訓練も重んじない。しかし戴勝益は、アルバイトは非常に重要な人的資産だと考える。彼らこそ第一線で消費者にサービスを提供する人材だからだ。そのため王品では正社員もアルバイトも同様に訓練している。「王品の訓練を受けた学生アルバイトは、態度も堂々としてきますし、お客様にもきちんと対応でき、多くのお客様が彼らはアルバイトなのかと驚かれます」と言う。
最近は努力しているアルバイトのために公平な競争の機会も設けて、今年7月までに全店舗の正社員とアルバイトの比率を過去の4対6から5対5に調整するよう命じた。より多くの従業員が正社員として福利厚生を享受できるようにするためで、正社員になって1年働けば会社の株を持つ権利も得られる。
相手の立場になって考える
王品では目標を持って努力する社員は平均6年で店長に昇格でき、さらに「内部創業」制度によって会社の支援を得て新たなブランドを創設できる。
戴勝益によると、一般の加盟店制度では加盟主が予見できないリスクを負わなければならず、成功率は低い。ただ台湾人にはもともと経営者になりたいという遺伝子があり「30〜40代まで働き、数百万を貯めたら、起業したいという思いが湧いてくるのです」と言う。
戴勝益は王品の方式を「創業プラットホーム」と呼び、多くの仲間が起業の機会を得、しかも会社の保障を得られるようにしている。
レジャーや生活の質を重視する戴は、働き過ぎはサービスの質を下げ、適度なレジャーがなければ社員は成長しないと考える。かつては自ら管理職を率いて登山や旅行、食べ歩きなどをしてきた。会社が拡大した今は、各部門に毎年国内外での活動を義務付け、一部の費用を会社が負担している。
一般の経営者は、社員が懸命に努力することが「貢献」だと考えているが、戴勝益は「会社に貢献するだけでなく、自分の夢や目標もかなえなければならない」と強調する。
ただ、責任感が強すぎて休暇をとれない社員もいることを考え、王品では、個人のニーズを会社の制度によって合理化、必須化し、社員がレジャーに対して心理的負担を感じないようにしている。従業員の団結とアイデンティティが高まることが、活力と創意に満ちた企業文化を育てると信じているからだ。