体を尊重
最近、視力の衰えでニードルを握らない李耀鳴だが、200人余りの弟子の管理は怠らない。これらの若い職人やスタッフのほとんどが短大の美術工芸科や芸術大学出身だ。外国人の学生もいる。
禅宗を信仰する彼は、弟子に毎日お昼前に出勤させ禅宗のお経「大悲呪」を7回読ませてから、店の掃除や準備をさせている。
「タトゥーに興味がある人なら、誰にでも教えます」弟子に求めるのは、視力のよさ、美的センス、フリーハンド(道具に頼らない)での絵のうまさなど基本的な条件だ。前科や事情があっても気にしない。だが規律には絶対服従で、18歳以下は商売は禁止、客との肉体関係は厳禁だ。
「タトゥー職人は肉体の美を追求し、両手で客の体を触る仕事です。客と長時間触れ合います。自分を保てず職業的なモラルに反したら、職人になる資格はありません」と李耀鳴は強調する。
職人の収入は多く、腕がよければ月収20万元、そこそこの腕前でも4〜5万元は稼げる。だが誰でも生計が成り立つわけではない。彼らはフリーハンドでの図案の拡大や縮小の練習や、オリジナルの開発、創造力の鍛錬などを続けなければならない。
「素質があれば2ヶ月で独立できますが、2年かかる人もいます」タトゥーの芸術的価値を高め市場を活気づかせるため、李耀鳴は季節ごとに新しい図案を発表し、流行にインスピレーションを求める。例えば前季は妖精の図案、今季はハリーポッターからヒントを得てユニコーンやヴォルデモートなど邪悪な力に満ちた図案を発表した。
タトゥーの現代化
近年は客の質も上がり、以前は路地裏にあった店も、続々と表へ出てきている。投資に積極的な店は、超音波清浄機、高温高圧殺菌装置、紫外線殺菌装置などをそろえている。李耀鳴も自ら開発した使い捨てのニードルで安心感を提供している。
だが、彼はまだ改善の余地があると考える。組合を組織し、タトゥー業界をまっとうな職業としなければ、衛生的で安心できるサービスは提供できないと言う。昨年、彼は台北の業者に呼びかけ協会を発足させた。次は台湾全体の業者をまとめたい考えだ。
「今は、自然に落ちるインクを開発中です。これなら誰でも自分の体をキャンパスにし、タトゥーを楽しめます」タトゥーに情熱を注ぐ李耀鳴は、ペインティングとタトゥーを人々の生活に溶け込ませることが最大の夢なのだ。